第117話 サムライガール

「準決勝?」


「うちのサムライガールが勝ち上がると思いますから。あいにくと当代サムライボーイはいませんが、お楽しみいただけると思いますよ」


 僕はトーナメント表の組み合わせを思いだして、ガブリエルに伝えた。

 両者が順当に勝ち上がったとして、美琴とガブリエルが当たるのは全国大会の準決勝。

 すなわち剣士と剣士が雌雄を決する戦いとなる。

 魔法能力者の大会でこういうことを言うのもおかしいけれど、どんなチャンバラ劇が繰り広げられるのか、今から楽しみになるぜ。


 ガブリエルは僕の意を汲んでくれたのか、美しい容姿でわずかに微笑む。


「サムライガール。なるほど、その者が勝ち上がれば、私を楽しませてくれると?」


「ええ……でもその前に、ご自分の足元にお気をつけて、あまり他人を侮っていると、足元をすくわれますから」


 忠告にも満たない定型句で、僕は話を締めくくった。

 微笑むガブリエルは僕とオサムの名前も聞かずに、立ち去って行った。

 オサムがすっかり骨抜きにされた様子で、言う。


「か、可憐だ!」


「え、おまえああいうのがタイプなの? やめとけよ……」


「うるせえ! 気品と優雅さに満ちた戦乙女! 俺との勝負が今から楽しみだぜ!」


「え? おまえ、僕と同じブロックだから、あいつと当たるのは決勝戦だぞ?」


「そうだったあああああああああ! 待ちきれねええええ!!!!」


 おまえバカだろ……アイドル崇拝は、いつの世も理解しがたいな。


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