第116話 残念です

「くぅうううう、美少女剣士! しかも金色の髪の天使様だ! 見ほれるぜ!」


「そうだなあ、綺麗な女の子が活躍するとうれしいよな!」


 僕とオサムが不純な動機で意気投合する。

 ちなみに次の試合は野郎VS野郎だったので、僕らは立見席を離れた。

 他人の試合に興味なんてねーよ。戦士には休息が必要なのだ。


 とはいえそろそろ僕らの出番だ。

 試合の準備をしようと、それぞれ道分かれようとした時に……


「あなたたち」


 と、金髪の女の子から声がかかった。

 ガブリエルと呼ばれていた、先ほどの美少女天使様だ!


「あなたたち、先ほどは私を見て、好き勝手な戯言をほざいていましたね」


「え? やだなあ、称賛の言葉ですよ! ていうかよく聞こえましたね!」


「残念です。この国にはサムライがいると聞いていました。お父様から、日本への留学をすすめられたときは、心が浮き立つような気分でしたが……」


 でしたが? 


「戦う相手は凡愚ばかり、誰も彼も誠実を持ち合わせない者ばかり、浅はかな者と馴れ合うために、私はこの地を踏んだのではないのですがね」


 ……口が悪いな、天使様。オサムは「可憐だ!」と懲りない様子だが、僕は違う。

 サムライなんて、いつの時代に夢を見ているのか知らないけど、剣士として剣戟けんげきがお望みなら、僕には返す言葉がある


「ではお姫様プリンセス。どうかどうか、準決勝をお楽しみください」

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