第114話 いちばん楽しいやり方で

 楽しい、楽しいか。

 確かに、魔法能力者の勝負は生き死にがかかってはいるが、殺し合いが目的ではない。

 試合なのだから半ばスポーツみたいなもので、楽しみを見出すのが正しいかもしれない。


 勝負を楽しむ気持ち、か。

 僕はインチキばっかりしてきたから、その手の楽しみは長らく忘れていたところだ。


「ええ? そりゃもったいないぜ。人生を損してる」


「僕の人生は貧乏くじばっかりでねえ」


「さびしいこと言うなよー、男なら大吉を引きに行こうぜー」


 どうかなー、大凶を引いた方が、話のネタにはなるんだけどね?

 もっとも、オサムが言っているのはそういうことではないけども。


「勝利も幸運も、自分の力でつかむものさ。世の中そういうもんだろ?」


「違いない。勝利の女神に祈っているようでは、人間ダメになるよな」


「おお、話が合うな! 祭!」


「話が合うっていうか、おまえが好き勝手に話しかけてるだけだろ……」


 「手厳しいぜー」と、オサムが頬をかいた。


 なれなれしい奴だなー

 だけど不思議と嫌な気分にはならない。


 心根が悪いやつではないと、短い間でもよくわかる。

 こいつは、僕が知る誰かに似ているなと思ったけれど……


 ふと思う。美琴が男だったら、こんな感じなのかもしれないな、と。


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