第113話 風谷オサム

「おいおい、頂点に立つって、それは予告優勝宣言か?」


「そうさ、勝つのは、俺だ」


 僕のとなりに座る少年、風谷オサムは迷うことなく言い切った。

 自信家だな。

 レベル9がゴロゴロしている全国大会で、そんな自信を持てるとはうらやましい。


 おもしろい気分になった僕は、意地悪に聞いてみる。


「じゃあオサム、僕は水魔法使いなんだけどさ。たとえば、おまえを呼吸困難にして勝とうとしたら、どうしてくれるんだ?」


「せこいなー」


「そう言うなよ……で? どうしてくれるんだ?」


 オサムは少し考えてから、ニヤリと笑った。


「息が続く間に、あんたを仕留めるさ」


「ええ? 本当にできるのかあ?」


「できるさ。俺の魔法能力は【風】、大気をあやつる能力だからな」


 ほう、風! 大気をあやつる能力か!

 確かに、この地球上のどこにでもある大気をあやつる能力ならば、無茶ぶりが間に合うかもしれない。

 というか、そっちの方が相手を呼吸困難にして勝ちやすそうだな……

 魔法で真空状態をつくったりして、相手を即死させてもいいし。

 その旨をオサムに伝えてやると、彼はおかしそうに大笑いした。


「それもいいけど、どうせやるなら、真っ向勝負がいちばん楽しいだろ?」


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