第112話 変なやつ?

 開会式が終わり、僕たち参加者は各々の試合まで自由行動になった。

 他の参加者の試合を観戦するもよし、しっかり休んで試合にそなえるもよしだ。


 僕が選んだのは後者だ。他人の試合になんて、興味ないしさあ。

 スタジアムから少し離れた場所にある運動公園で、僕は時間を潰していた。

 僕と似たようなことを考えている参加者は大勢いるようで、この運動公園は全国大会参加者の休息所になっているようだ。

 精神集中している者がいれば、ジョギングをしている者もいる。

 誰もが自らの勝利をうたがっていないという点では、共通の志を持つ者の集いだ。


 その中で……ひときわ目立つのは……


「へへっ、みんな燃えてるな。だが、勝つのはこの俺だぜ」


「ん?」


「よお、海野祭うみのまつりさん、地方大会で町を水没させようとした大馬鹿野郎ってのは、あんただろ?」


 ベンチに腰を下ろす僕に声をかけてくる少年がいた。

 見るに、年のころは僕と同じくらいか。

 見るからに快活な表情をして、言葉遣いも僕とは真逆に清々しい。

 元気なやつだな、苦手なタイプだ。と思って、僕は苦く笑った。


「その話は忘れてくれよ。あの時は必死だったんだ」


「対戦相手はレベル0の女の子だったんだろ? なにがあったんだ?」


「まあ、いろいろと……」


 僕が言葉をにごすと、少年は詮索せずに「人の事情はいろいろだな」と笑ってくれた。


「俺は風谷かぜたにオサム……この全国大会で、頂点に立つ男さ!」

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