第109話 変わったよ
「美琴は、変わったよな」
「そうでしょうか? 私には祭くんの方が変わったように思いますけど」
そうかな、そうかもしれないな……
人を信じるとか、友達だとかそうでないとか。
そんな話題とは縁遠い人生を送ってきた僕が、まさかこんな友情に手厚い男の子になってしまうとは……いやあ、世の中、一寸先は暗闇だぜ……
「一寸先は暗闇って……それって、悪い変化じゃないと思いますけど」
「さてねえ、そういう美琴も変わったんじゃないか? 最初は空元気一辺倒みたいなやつだと思ったけど」
「けど?」
「迷って悩んで遠回りして、良い感じに人間味が出てきたような気がするよ。今の美琴の方が、僕は好きだな」
「す、好き!?」
「友達だろ? 友達のことは、僕はだれでも好きだよ」
自分ながら、依存気質なのかねえ? 前世をふくめて他人に裏切られるとわかっていても、友達と思える相手には好意を向けていたような気がする。
そんな話をすると、美琴は「そ、そうでしたか」と、咳ばらいをした。
「僕は美琴を信じている。だからさ、こういうのは重いかもしれないけど……」
宿の門限まであと少しだ。
旅の恥はかき捨ての気分で、僕はおもしろく笑った。
「たまには美琴も、僕のことを信じてくれよな? 友達だろ?」
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