第103話 ボランティアのお兄さん

「ん? なんだろうか?」


 ゴミ拾いをしているお兄さんが、僕らを見つけて、不思議そうにした。

 そりゃそうだろうな。

 学生くらいの若者が、海に遊びに来て、どうして清掃員に近づいてくるのか……お兄さんの視点で見ると、悪ふざけで絡まれていると考えてもおかしくない状況だ。

 しかし、今日の僕たちは模範的な学生として、クリーン作戦を決行するのだ!

 清掃員のお兄さんに、迷惑をかけるつもりはございません!


「というわけで、僕らもゴミ拾いを手伝っていいですか?」


「ああ、歓迎するよ。俺も仕事ではないから、ボランティアなんだが……それでよければ、道具を貸そう。少し待っていてくれ」


 やったぜ、頼んでみるもんだな。

 ひとまず合宿の目的ができて、一安心だ。

 僕とギンガ先輩が「よかったですねー」と見合っている隣りで……

 しかし、美琴はなにやら真剣な表情をしている。


「あの人……」


「ん? どうしたんだ? 美琴?」


「あの人、動きに隙がありません。ただものではない気がします」


 なんじゃそら。剣士にしかわからない野性の勘ってやつかね?

 僕にはさっぱりわからないし、気のいいお兄さんに見えたけどな。

 案の定というべきか、戻ってきたお兄さんに美琴はこんなことを言う。


「相当な使い手とお見受けしました! 私と手合わせをよろしくお願いします!」


 ええい、たわけ! やめーい!

 僕が水のハリセンで美琴の頭を引っぱたくと、お兄さんが愉快そうに笑ってくれた。


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