第102話 そんなことよりゴミ拾いだ

 当たり前だが、この場所は地元ではない。

 列車に揺られてガタンゴトン。

 僕たちは素晴らしい眺めの砂浜にやってきていた。


「さあ、みんな! 海釣りの時間よ! 誰がいちばん釣れるか競争をしましょう!」


 と、童心に返ったようすの有栖川顧問が我先にと駆け出していく。

 僕らは……というと、道具を持ったまま、「どうするべえ?」と顔を見合わせていた。


「ギンガ先輩って、釣りしたことあります? 僕はないです」


「僕もないね。シンジは好きだって言ってたけど、あいつを連れて来ればよかったな……」


「私も釣りは初めてですね。やり方を教えてください! 精進します!」


 しかし無学な生徒に釣りを教えてくれるはずの有栖川顧問は、すっかり遠くに行って、見えなくなってしまった。ひどすぎる放置プレイだ。ホントに教員かオメー。

 仕方なく、僕たちは釣り道具を放り出して、砂浜にブルーシートとパラソルを設置し、一休みすることにした。

 美琴が困った表情で、僕を見る。


「どうしましょうか、祭くん」


「僕に聞くなよ。僕は有栖川顧問の考えなんて知らねえよ……」


 合宿ということは1泊2日で空き時間を潰さなければならないわけだ。

 ふざけやがって、自分が遊ぶ口実をつくりやがったな! あの中二病教員!

 周囲を散策していたギンガ先輩が、こんなふうに提案する。


「とりあえず、ゴミでも拾おうよ。あそこに清掃をしている人がいるみたいだし」


 ボランティア活動か。海釣りよりも、そちらの方が学生らしくていいかもしれない。

 僕と美琴は拒む理由もなく、清掃員のお兄さんに声をかけた。


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