第100話 ただいま

 翌日、僕は列車に揺られてひとり学園の寮に戻った。

 美琴のことは心配だけど、ひとまずは平気だろう。


 なにせ帰り際に、美琴はこう言ってくれた。


「ありがとうございました。祭くん……それと、ごめんなさい」


「謝らなくていいよ。人は誰でも、気落ちする時があるもんだ」


「祭くん、あなたを倒すのは、私です」


「へえ?」


「約束します。お姉ちゃんじゃない、今度こそ、私があなたに挑戦しますから」


 僕は何も答えなかった。

 その時の美琴が、とても良い笑顔をしていたから、答える必要はないと思った。


 「またおいで」とお母さんが、言ってくれた。

 「二度と来るな!」とお父さんが、威嚇してくれた……


 そうして週末の休日が終わり、月曜日がやってくる。

 魔法能力者の全国大会はもうしばらく先だ。


 おもしろくもつまらなくもない、平凡な日常が戻ってくる。

 めずらしく早起きした僕は、誰もいない朝の教室にやってくる。


 誰もいない、いないはずの教室で、僕を出迎えてくれたのは――


「ただいま」


 僕の友達だ。

 おかえり、と、僕は美琴に笑顔であいさつをした。


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