第93話 事情は分かった

 かくかくしかじかで~と。

 僕は美琴を取り巻く現状を、美琴のご両親に簡単に説明した。


 僕と美琴が同じ同好会のメンバーであること。

 魔法能力者の地方大会を終えて、ふたりで全国大会に出場すること。

 そして最後に……美琴の中に眠る魔王の意識について、説明した。


「なるほど、事情はわかった。おまえさんは、美琴のメンタルが心配で、実家までついてきてくれたと、そういう話だな? 海野祭うみのまつりくん」


「はい、同好会の連中に焚きつけられまして」


「あはは、美琴はいい友達を持ったねえ」


 お母さんが朗らかに笑っている。

 美琴のお父さんは僕を射殺さんばかりに睨んでいるけど……居づらい、居づらい。


 少し考える素振りを見せた後に、美琴のお父さんはこう切り出した。


「しかし美琴よ。おまえの未熟がすべての原因だというのなら、それはおまえが解決すべき問題だな?」


「……はい、お父さん。その通りです」


「天川の剣を受け継ぐおまえが、そんな体たらくでは話にならん! 即刻、鍛え直せ!」


 美琴の表情がキリリと引き締まった。

 鍛え直せって、そんな根性論でいいなら世の中メンタルの病なんて無いだろうに……

 僕があきれていると、お母さんが僕と一緒になって苦笑いしてくれた。


 育ての父と娘が言い合う隣で、お母さんは僕にそっと伝える。


「長くなりそうだねえ。犬の散歩に付き合ってくれないかい?」

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