第92話 育ての親

 玄関で出迎えてくれたのは、美琴のお母さんらしき人だった。

 彼女は僕を見るや否や、驚いた顔で引っ込んでしまう。


「ちょっと、お父さん! お父さん! 大事件だよ!」


「なんだい、奥さん……」


「美琴が男の子を連れて来たヨ!」


「なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?」


 そんないまどきめずらしい会話を経て、中年のおっさんが飛び出してきた。

 おっとり刀……という表現がピッタリなのかな?

 どうして日本刀を持っているのか僕は理解できないなあ。


「やろうぶっ殺してやる!」


「お、お父さん、やめてください! 祭くんは悪い人じゃないんです!」


「止めるな美琴! 義理とはいえ、手塩かけて育てた可愛い娘を奪いに来たやろうを生かして帰す理由はねえ! 決闘だ! てめえも男なら、俺を倒して、美琴を持っていけ!」


「お、おとうさーん!?」


 このオヤバカにして、この美琴ありってことなのかなあ……

 しかし気になるワードも出てきた。

 僕は不思議に思って尋ね返す。


「義理って?」


 そのとき、美琴が表情を少しだけ曇らせ……しかしすぐに笑顔になった。


「紹介します。こちら、私の育ての親の、お父さんとお母さんです」

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