家庭訪問

第91話 地方大会を終えて

 地方大会を終えて、僕は久しぶりの自由を手にした。

 同好会の活動とは無関係に、羽を伸ばす機会を手に入れたのだ。

 美琴も……目を覚ますと、魔王でなく、いつも通りの美琴に戻っていた。

 しかしひどく気落ちして、本当の意味でいつも通りに戻るには時間がかかりそうだ。

 こればかりは仕方がないよな。

 僕と決着をつけよう! なんて意気込んでいた地方大会の結果が、魔王に意識を乗っ取られてそれっきりだなんて、美琴でなくても気落ちするだろうさ。

 とはいえ、美琴のメンタルの課題は、彼女自身の問題だ。

 僕にできることはなにもなく、時間が解決してくれるのを待つしかない。

 おせっかいで干渉するばかりが、友達じゃないさ。


 さあて、それはそれとして! 休暇だ、休暇!

 列車に揺られてガタンゴトン。

 自由を手にした僕がやって来たのは!


「ようこそ、祭くん、私の実家に!」


 僕がやって来たのは美琴の実家だった。


 なにを言っているのかわからねーと思うが、美琴の実家だ。

 僕としても、なにをどう間違えてこの状況になったのか判断がつかない。

 冷静になって思い出す。

 最後に魔法剣研究会でギンガ先輩と顔を合わせた時……


「今は美琴さんが心配だね、祭くんが励ましてあげたらどうかな?」


 そんなギンガ先輩の提案がすべての発端だった。

 有栖川顧問がノリよく承認し、美琴を説得して、今に至る。


「祭くん、淑女を支えるのは男の義務よ。たまには甲斐性を見せなさい」


 知るか!!!!

 こいつら、他人事だと思いやがってええええええええええ!!!!

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