第90話 決着

 スタジアム上空の水の塊が消えて、晴れた空が顔を出した。

 まるで糸が切れたみたいに、美琴は力を抜いて僕の手元で眠っている。


 僕が美琴をスタジアムの地に寝かすのと、審判が決着を告げるのは同時だった。


「決着~! 地方大会決勝戦! ハラハラドキドキ……っていうか、危うくこの町が全滅する瀬戸際だったわけだけど! とにかく! 血沸き肉躍る激戦を制したのは、エントリーナンバー39番。海野祭うみのまつりくんです! あ、あはは優勝おめでとう~!」


 実況のお姉さんの投げやりな称賛に合わせて、僕はみなさんに手を振った。

 ブーイングみたいな歓声が、勝者である僕の優勝を称えてくれる。


 やったぜー!

 危うく町を全滅させかけたわけだけど、勝てば官軍負ければ賊軍だ!

 地方大会を優勝した僕には無限の栄光が約束されている!

 と思っていたら――


「祭くん」バシイッ!


 駆け寄ってきた有栖川顧問に思いっきりぶん殴られた。

 痛ッ!? 暴力教師だ!? なにしやがる!?


「ほざきなさい。世の中には、やっていいことと、悪いことがあるのよ」


「失礼いたしました……」


 くっそー、有栖川顧問のくせにまともなことを言いやがって。

 僕は美琴を助けただけなのに、報われないぜ……

 まあ、とりあえず全国大会出場の切符はゲットしたわけだ。

 後から聞くに、優勝者と準優勝者のふたりが全国大会に出場できるそうで。

 僕と美琴はなんと、2人そろって全国大会への出場が決定したわけだ。


 それを美琴がよろこぶのかどうかは……また、別のお話だな。

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