第56話 おねえちゃんです

「うーん、魔王、マオウ、マオー……心当たりと言いますか」


「うん」


「さっき眠っている間に思い出したんですけど」


「うん?」


「私のお姉ちゃんが、真央マオって名前なんですよ」


「僕が知るかボケェ!!!!」


「ひぃっ!? で、でも、ひとつ腑に落ちたことがあって」


 んん? 腑に落ちたこと? なんだそりゃ?

 僕は不思議に思って美琴の言葉を待つ。


「聞こえてくる“声”って、幼い頃のお姉ちゃんにそっくりだなあ、って思うんです」


「姉に? どういうことだよ?」


「なんというか、陰気で、頑なで、王様みたいな態度のお姉ちゃんなんですけど」


 魔王じゃねえか。幼い頃からどんな英才教育うけたんだよ、美琴の姉貴……


「死んじゃったんですけどね」


「へ?」


「生まれつき身体が弱くて、医療魔法でも治らなくて、幼い頃にお葬式をしました」


 美琴はさみしそうに微笑み「見守ってくれているんですかね」と、遠くを見た。

 僕は返す言葉をなくして、「そうか」とだけ、うなずいた。


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