第57話 もっともっと、強くなります
「さっき、ひとつ思い出したんです」
下校の途中に、美琴がそんなふうに言った。
「お姉ちゃんが昔、私に魔法を教えてくれたんですよ」
「魔法を? どういうことだよ」
「折れない刀を呼び出すイメージと、もうひとつ、石を浮かせる魔法です」
折れない刀、それは美琴自身の魔法能力だ。
しかしもうひとつ、石を浮かせる魔法は聞いた覚えがない。
念動力か? すげえな。
「石を浮かせるって? 美琴はそんな魔法が使えたのか?」
「いえ、使えません。お姉ちゃんの魔法なんです。私もがんばって練習したんですけどね。イメージができなくて、さっぱりでした」
だろうな。石を浮かせるなんて、どうやればいいのか僕もよくわからない。
「けっきょく、私がその魔法を使えるようになる前に、お姉ちゃんが死んで、いなくなってしまったんですけど」
「そうか」
「でも今はなんだか迷いの霧が晴れてスッキリしました。きっと私の中に残っていたお姉ちゃんへの想いとか、未練とか、そういうものが心のわだかまりになっていたんですね」
……僕は黙った。なんとなく、少し違う気がしたからだ。
とはいえ、美琴に返せる的確な言葉はなく、僕はひとまず語らずの対応を是とする。
「私、がんばります。お姉ちゃんに恥じないように、もっともっと、強くなります!」
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