無意識からの声

第51話 美琴の無意識

 美琴の目がとろんとする。

 こくりこくりと、うたたねするみたいに脱力する。


 へえ、これが催眠魔法の効果なのかな?

 戦うばかりが魔法能力ではないということか、不眠症に効きそうな魔法だな。

 僕がのんきな感想を伝えると、シンジ先輩は笑ってくれる。


「たしかに催眠魔法は不眠症に効くよ。疲労の解消にはもってこいだ」


「さようですか。で? 美琴の調子はどうです?」


「焦るな。たった今、彼女に催眠魔法をかけた。意識と無意識の境で、彼女の深層心理を浮き彫りにしている」


「というと?」


「この状態でなら、彼女が意識しない“声”を俺たちも聞けるだろうさ」


 シンジ先輩がひとまず、腰を落ち着けた。

 僕たちは黙って、美琴の反応を待つ。


 声をかけようかとも思ったけれど、余計なことをして失敗するのはめんどうだ。

 水差し魔の僕にはめずらしく、黙って、静かに、結果を待つ。


 待つ、待つ、待つ……

 3分ほど待って、そろそろ水差しがしたくなってきたころに。


「口惜しい」


 美琴が、ポツリとつぶやいた。

 うつろな両目をした美琴が、しかしはっきりとした声音で言う。


「口惜しい。あの程度の能力者に、“私たち”が後れをとるなんて」

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