第48話 悩みがあるんです

「私、声が聞こえるんです」


 帰宅の途中に美琴がそんなことを言った。

 声? 藪から棒に“声”って、なんだ? わからん。

 肉声とは違う幻聴ってことか? それはメンタルの病だよな。


「いきなりなんだ? 声って? なんの声が聞こえるんだ?」


「刀を握っていると、自分じゃない誰かの声が聞こえるんです」


「はあ、それってお悩み相談かね?」


「はい、急に言われても、まつりくんも困るとは思いますけど……」


 確かに困る。困るけど、興味のわく話題でもある。

 単なるメンタル不調なら心理士のカウンセラーをご案内するところだけどね。

 美琴の場合は、内容が違うように思われた。

 なにせ、明るい性格をしている美琴の、出会って初めてのお悩み相談だからな……

 美琴は僕のことを友達だと言ってくれた。

 僕が美琴の友達なのかはわからないけれど、お悩みくらいは聞いてもいいさ。


「へえ、どんな声? その声は、どんなことを言ってくるんだ?」


「戦い方を指南してくれるんです。それに従う時もあれば、無視する時もあります」


「……なるほど、その声は美琴のお師匠さまなんだな」


「変ですよね。こういう幻聴はメンタルの不調ではないのかと、不安にもなるんです」


 なるほどなあ。明るい美琴も彼女なりに不安や心配の種があるということだ。

 僕は少し考えてから、ひとつの提案をした。


「わかった。僕に考えがある。あした、ギンガ先輩に相談してみよう」

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