第47話 というわけで

 3位決定戦を、美琴はあぶなげなく勝利した。

 美琴の対戦相手は、僕に負けたBブロック代表だったけど、魔法で身体強化した美琴に手も足も出ず、首を斬り飛ばされる前に、彼はすぐに降参してしまった。


 魔法は理不尽な力ではあるけれど、実力が拮抗した場合には、やはり個人がそれぞれ持つフィジカルの強さがものを言う。

 その点に限れば、美琴は校内で最強の実力を持っているのかもしれない。


 僕が「おめでとう」と言うと、美琴は「ありがとうございます」とニコリ笑った。

 美琴が敗者復活の3位で満足していないのは明白だけど、今はこれでいいさ。


 戦いの後、放課後の空き教室で――有栖川顧問が僕らの健闘を称えてくれる。


「よくやったわ。ふたりとも、これでまつりくんと美琴さんの地方大会への出場が決まった。これは、魔法剣研究会が発足して以来、最高の実績よ!」


「へへー、ありがとうごぜえます……」


「祭くん? あなたは他人の話に水差しするくせを無くした方がいいわね。人として大切なマナーよ」


 うっせーなー、僕はもともと大会参加に乗り気じゃなかったんだよ。

 ノルマだから参加して、結果として優勝しただけで、やる気なんかあるわけないだろ。

 僕がふてくされていると、美琴が「まあまあ」と苦く笑って励ましてくれた。


 やる気のない僕とは反対に、美琴は向上心をみせてワクワクしている。


「地方大会ではもっと強い能力者のみなさんと手合わせできるんですよね。楽しみです!」


「その意気よ、美琴さん。私はあなたの大健闘と大番狂わせに期待しているわ」


 じゃ、僕は帰りますね! と言いたくなる気分をおさえて、僕は頬杖ついていた。

 仮病で保健室に避難していたギンガ先輩が、「おつかれ」と、僕をねぎらってくれた。

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