第38話 マリオネットの少女

「あの子は、紫雲院しうんいんシオンさん」


 と、対戦相手の素性を有栖川顧問が教えてくれる。


「【物質操作マリオネット】の魔法能力を持つ、学園の2年生よ」


「先輩か。でも【物質操作マリオネット】? よくわからん能力だなあ」


 見た目は悪趣味だが、悪趣味なだけであんまり強力な能力には見えない。

 操り手も機敏には見えないし、美琴の敵ではないだろう。

 あんのじょう、美琴は人形をあっさりと一刀両断した。


 一刀両断した……のだが、そこはさすがに人形、というべきか。

 破壊されても立ち止まることなく、ポルターガイストのように浮遊して、襲い来る。


 これには美琴も少しばかりおどろかされたようだ。

 まずは冷静に一歩引いて、距離を取る。


 そこから刀のリーチを活かして、短い手足の人形を切り刻む。

 文字通り手も足もでなくなったところで、前進。


 その繰り返しで、美琴はおもちゃの兵隊を蹴散らし、少しずつ距離を詰めていく。

 はためには楽勝ムードのワンサイドゲーム……に思われた。


 が、そこは準決勝に残った魔法能力者の戦いだ。

 シオンは武装人形を巧みに操り、美琴を背後からも挟撃する。

 こうなれば、2つの手しか持たない人間は忙しい。


 退くことはできず、斬り捨てても復活する人形たち。

 数の暴力に押されて、じりじりと、美琴が追い詰められていく。

 綺麗に包囲されてしまった状況で、美琴は不敵に微笑んだ。


「なるほど、強い。学びになります」


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