第32話 魔法能力者校内選抜大会

「ついにこの日がやってきたわね」


 有栖川中二病患者もとい、有栖川顧問が思わせぶりに言った。


 魔法剣士の全国大会への登竜門、地方大会への参加者を決定する魔法能力者校内選抜大会が、今日はじまるのだ。


「帰りたいですね。一回戦敗退で、僕は帰りたいですよ」


「その必要はないし、そんな無様をさらしたら私はあなたを軽蔑するわ」


 勝手に軽蔑してくれよー。

 僕はもともと、争いが好きなタイプじゃないんだよ。

 競争とか勝負そのものじゃなくて、そこに付随する研究とか技術理論をこねくり回してニコニコしているのが、僕の楽しみなんだよ……


 だから、本当は身体を動かすよりもボードゲームとかの方が好きなんだよなあ。

 余談だけど、部活動対抗戦のボードゲーム研究会相手には、僕が大勝したのだ!

 いやま、本当に余談だけどね……


「私とまつりくんが当たるのは決勝戦ですね! お互い、善い戦いを!」


「そうだねえ、ところでギンガ先輩は?」


「先輩は不参加だそうです。なんでも猛烈な腹痛に襲われたとのことで」


 ほう、食中毒かな? って、んなわけがあるか!

 くそおおおおおおお、逃げやがったな、あの野郎!


「ふたりとも油断は禁物よ。追う者、追われる者の立場は、一瞬の駆け引きで逆転するのだから、ウサギが相手でも全力を尽くす百獣の王の気持ちを忘れずに、いいわね?」


 有栖川中二病患者のありがたい助言は無視して、僕はグラウンドにむかった。

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