魔法能力者校内選抜大会

第31話 部活動対抗戦を経て

 部活動対抗戦という名の道場破りがはじまり、1カ月が経った。

 僕たちの戦績は誇らしくもフィフティフィフティー、つまり勝率五割くらい。


 だってさー、茶道部相手に茶道の作法で勝てるわけないじゃん。

 魔法能力とか関係なくて、知識と技術の勝負になったら、勝てないよー。


 それでも美琴は素人なりに勝負をがんばっていた。

 いやあ、土台でやる気のない僕とは大違いだ。


 茶道部では「まずい、もう一杯!」なんて作法を披露していたし。

 裁縫さいほう部では、「痛い! マチ針が私を殺そうとしています!?」とか言って、みんなを笑顔にしてくれたんだ。


 ……いやまあ、剣術以外はからっきしなんだなあ、って思ったよ。

 かくいう僕も、物事の造詣が深いわけではないから人のことは言えないけどね。


 それと……ああ、そうそう、美琴は僕のサポートをしてくれている。

 部活動対抗戦でわからないことがあれば、いっしょにスマホで調べてくれるし、有栖川中二病患者のせいで、気まずい雰囲気が流れた時は、笑いを誘って場を流してくれる。


 いいやつだよ、こんないいやつはいないってくらい、美琴はいいやつだ。

 ただ、前世から続く人間不信の僕に言わせれば、すこし怖くもある。

 美琴に裏切られることが怖いんじゃない。

 いつか美琴が能天気な明るさを失ったとき、彼女が自分自身のアイデンティティの喪失に耐えられるのか? という他人の心配で、僕はおそろしく思うんだ。


 たぶん、美琴はそんなことを微塵も考えていないんだろうな……

 彼女はまさに剣の乙女と呼ぶのがふさわしい、純真な女の子だ。


 その研ぎ澄まされた剣で……危うさをふくんだ脆い強さで、どこまで戦っていけるのか、僕はそれを知りたく思う。


 かくして、魔法能力者校内選抜大会の日がやってくる。あはは、めんどくせー。

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