第28話 感電はしたくないな

 しかしどうしたものかな、僕は無い知恵絞って考えていた。

 【稲妻剛球ライトニングストレート】、球速150キロを超えるであろう直球の威力はもちろんのこと、【無回転稲妻剛球ライトニングナックルショット】なんていうトンデモ魔球を持ち出されてしまっては、野球素人の僕はとても困る。

 野球なんて、小学校のころに、地域のクラブ活動に参加して以来だ。

 言ってしまえば、打てるはずがない。打てる方がおかしい。

 対応しているギンガ先輩と美琴が異常なのだ。僕は悪くない。


「ボールを水で濡らしても、感電するくらいだしなあ……」


 加えて、魔法能力の相性もあった。

 これが単なる魔法剣士の決闘なら、僕が勝っていただろう。

 しかしさりとて、これはスポーツだ。野球の1打席勝負なのだ。

 だから、小細工をするにしても、生半可な小細工では意味がない。

 やるなら徹底的に、ぐうの音も出ない完全勝利のやり方が必要だ。


「よし、決めた」


 だから、今回は僕も腹をくくろう。

 卑怯者と罵られようとも、勝てば官軍負ければ賊軍だ!


「悪いけど、1球で決めさせてもらうよ、先輩」


「ほう?」


「1球で決められなければ、僕の負けでいい」


「…………」


「それとも、最初の1球を外してきますか? 敬遠とか」


「言うじゃねえか! いいぜ、勝負だ! 俺の思いっきりを見せてやるさ!」


 そうこなくっちゃおもしろくない。いくぞ、先輩。これが僕の最強レベル9だ。

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