第27話 僕の出番だ

「ストライク、バッターアウト!」


 球威でへし折れた金属バットを下げ、美琴は静かに息をついた。

 美琴はナックルボールの変則軌道を見切り、スイングを成功させた。

 しかし、稲妻をまとう剛球の球威にバットの方が耐えきれなかった。

 ボールは、無情にもキャッチャーのミットに収まったのだ。


「つーかよく取れたな、キャッチャー。球速150キロ近いナックルの捕球とか、プロでも難しいだろ」


「負けました! 完敗です。手合わせ、ありがとうございました!」


 美琴がすがすがしくあいさつをして、バッターボックスを出る。

 エースヒロモトは、強敵との戦いを終えて、最高に良い顔をしていた。


「これもう、僕が出なくていいんじゃないかな? 終わりにしよう」


「その必要はないわ。あなたがラストバッターよ、祭くん。真打登場ね」


 ハードルを上げるのやめてもらえませんかね……


「やめてもいいぜ、俺は逃げるウサギを追わない主義でね」


「おっ、言ったな、先輩?」


「言うさ。言わせてもらうね。おまえが噂のレベル9の新入生だろ? 俺は別に、魔法能力で他人の価値を決めるつもりはないが……」


「決めるつもりはない、が?」


「どうせなら、俺にも見せてくれよ。絶対無敵レベル9の強さってやつをさ」


 挑戦者、チャレンジャーとは、この先輩のためにある言葉だな。

 前言撤回だ。僕はおもしろく思って、バッターボックスに立った。

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