第24話 一意専心、お相手します

「ごめん、ボールを前に飛ばせなかったよ」


 勝利条件を達成できず、ギンガ先輩が悔しそうに戻ってくる。

 しかし真剣勝負に挑んだ者を、だれが笑うだろうか?

 少なくとも、僕はギンガ先輩に対する評価を改めていた。

 このひと、ふつうに頼りになるタイプの先輩だな。

 穏やかだけど、やるときはやる、という評価がぴったりな人だ。


「すごいです! ギンガ先輩、カッコよかったです!」


「ははは、ありがとう美琴さん、だけど負けたら意味がないよ」


稲妻剛球ライトニングストレート】か。

 正しく魔法能力で強化されたウィニングショットだ。

 球速150キロは出ていそうだし、それ以上に球威がすさまじい。

 というか、あんな球を素人が打てるのか???

 うーむ、と僕が首をかしげていると……美琴が進み出る。


「次は私の番です! 先輩の無念は、私が晴らします!」


 熱狂冷めやらぬうちに、バッターボックスにチャレンジャー2号が踏み入る。

 この調子だと僕がラストバッターになりそうだ。さーて、どうするかな。

 野球は素人だけど、勝負に負けるのはおもしろくないからな……


「うわさの新入生か、俺は女が相手でも容赦しないぜ」


「望むところです。手合わせを願います!」


 美琴は腰だめにバットを構えた。ん? これは抜刀術の構えか?

 鞘もないのに、バットを刀みたいに扱えるのだろうか?

 その答えは、美琴の凍り付くような気迫が教えてくれる。


「いざ、尋常に」


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