第23話 魔球VS魔打法

まつりくん、よく見ていてくれ」


「え、僕?」


「これが僕の、魔法能力レベル4だ」


 次の瞬間、先輩の目の色が……黒から赤と緑のオッドアイに変わった。

 目? 視力とか、視覚に関係のある魔法能力なのか?

 僕の疑問に答えをくれたのは、野球部エースヒロモトの言葉だ。


「出たな、【広域知覚こういきちかく】。小学校の頃はそいつに苦しめられた」


「【広域知覚】?」


「言葉そのまま、知覚領域の拡大さ。今の僕は大気の流れさえ、正確に把握できる」


 魔法能力のスポーツへの転用、いうなれば魔打法ってやつかね。

 うーん、フェアプレイの精神で考えると微妙な気もするけど……

 この程度なら許容範囲か? 公式の試合ではないし、まあいいか。


「来い、ヒロモト。次は打つ」


「おもしれえ、舐めてたわけじゃないが……いいぜ、勝負だ」


 第3球――1球外すという発想は、見る者の頭から抜け落ちる。


「くらいやがれ、こいつが俺の全身全霊レベル6――」


 そして、エースヒロモトは、文字通りの“稲妻”を身にまとい、投球する!


「魔球【稲妻剛球ライトニングストレート】!!!!」


 直球ド真ん中! その圧倒的な重圧に、ギンガ先輩は僅かにバットを振り遅れる。

 ――キャッチャーフライ、そのとき勝利の女神は歴戦のエースに微笑んだ。

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