第13話 剣の道に生きる乙女

「おいしい! お昼ご飯がおいしいです!」


「はあ、そうですかい……」


 昼休み、美琴はなぜか僕のとなりでお弁当を食べていた。

 白米でいっぱいのお弁当箱には梅干しがひとつ乗っているだけ。

 美琴はいい笑顔で、僕のお弁当からからあげと野菜を取っていく。

 そうそう、栄養バランスを考えて、野菜も食べないとな……


「って、僕の弁当からおかず取ってんじゃねーぞテメー!?」


「日々精進です。しっかり食べないと午後から体力が持ちませんから」


 それ僕のお弁当なんですけど……


「だって、お母さんがめんどくさがってつくってくれないので……」


「そりゃ不憫だな……いやいや! 自分で作れよ! それか惣菜そうざいとか!」


「ごちそうさまでした! おいしかったですまつりくん!」


「もう一回ぶっ殺すぞテメー」


 と言うと、また手合わせしてくれるんですか!? と喜ばれてしまった。

 美琴はどうやら、学業よりも青春よりも、剣の修行が最優先の人間らしい。

 剣の道に生きる乙女……なんて言うとカッコいいけどね。

 要するに世間ズレした天然おとぼけさんなんだな。


 チャイムが鳴る。僕のお弁当が壊滅して、美琴が笑顔になる昼休み。

 その終わりに、学園長から呼び出しをくらったのはなんの用事かな。

 午後の授業をすっぽかせるのはうれしいけど、めんどくさい……


 レベル9、魔法能力者ってやつも、悪目立ちは楽じゃない。

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