第12話 天川美琴【あまかわみこと】

 翌日、僕は学園で、ちょっとした有名人になっていた。

 レベル9の魔法能力者、という風評があっというまに広まったからだ。

 レベル8の炎使いを斬り殺したレベル0の女の子剣士を瞬殺した僕!

 という、よくわからない強弱関係が、うわさ話で聞こえてくる。

 前世の記憶を持つ僕にしてみれば、人殺しを称えられてもうれしくないけど……

 ああ、そうそう。この世界は魔法のおかげで医療がものすごく発展している。

 具体的に言うと、死という言葉がものすごく軽い。

 心臓を貫かれても、脳みそが爆散しても、医療魔法で元に戻る。

 つまり寿命以外では人間が死なないし、死んでも元に戻る。

 だから、魔法能力者なんて連中が決闘騒ぎをしても許されるという話だ。

 こんなふうにね……


「負けました! 私の完敗です。祭くん、手合わせありがとうございました!」


 早朝、ホームルーム前の教室で、例の女の子が僕の前に立って良い笑顔で言った。

 自分をぶっ殺した相手に、どうしてありがとうと言えるのかわからないけどね。

 クラスメイトの視線を痛く感じながら、僕は彼女に愛想笑いを返した。


「誰だっけ?」


「酷い!? 昨日、自己紹介したのに!?」


 そうだっけ? 聞いてないよな。

 うん、そうだよな。「みなさん手合わせをしましょう!」以外には聞いてないぞ。

 その旨を僕が伝えると、彼女は「では改めて」とたたずまいを正す。


「私は、美琴みこと天川あまかわ美琴みことです。よろしく!」


 ご丁寧にどうも、こちらこそ……


「ではさっそく、今日も手合わせをよろしくお願いします!」


 こちらこそよろしくしたくないと、窓際に座る僕は遠くの空を見て思った。

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