海野祭【レベル9】と天川美琴【レベル0】
第11話 バカは死んでも治らない!
とつぜんだが、僕、
なにをわけのわからんことを言ってやがると思われるかもだが、聞いてほしい。
僕には前世の記憶がある。
この世界と似たような世界。魔法もなければ剣士なんてどこにもいない、“現代”と呼ばれる日本で、僕はふつうの学生として暮らしていた。
おもしろいことなんてなにもなくて、人間関係に失敗して友達はひとりもいない。
信じられるものはなにもなく、信じたそばから裏切られる……
いわゆる人間不信におちいってしまった、僕は情けない人間だった。
「おまえをわかってくれる人間なんてこの世に誰もいないだろう」とは父の言葉だ。
誰も信じられない? じゃあ信じるなよ、とバカにされたのをよく覚えている。
挙句の果てには、家族にも追い詰められて命を絶った……と僕は記憶している。
これが事実なのか、思春期の僕の妄想なのかは、よくわからない。
ただ、そういう記憶が僕の頭の片隅にあるのは、まぎれもない現実だ。
生まれ変わった僕が人生を成功に導けたのかと言われると、そうでもない。
やっぱり前世の人間不信は根深くて、どうしても他人とは距離を置いてしまう。
僕にできたのは前世の失敗を繰り返さないよう、最低限の足並みをそろえるくらいだ。
そんな引け腰の僕だけど、今回の人生では、天から与えられた才能がある。
――それが水の魔法。
魔法能力では最高位のレベル9を記録する、魔法剣士としての才能だ。
と言っても、前世の僕は魔法なんて知らないし、剣の達人でもなかったからね。
万事がうまくいくのかと問われれば、弱点はたくさんあるとお答えしよう。
それでも一応、せっかくの才能を腐らせないために、僕は努力にあけくれた。
図書館に通ったりして、水魔法を使った戦法を考えたりした。我流でね。
戦いの特訓がけっこう楽しかったのは、僕も男の子ってことなんだろうな。
そんな感じで、今生、僕の高校生活がはじまろうとしていた。
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