第10話 魔法学園の水魔法使い

「立会人は私がつとめよう」


 有栖川先生が、割り込み、僕らの間に立った。

 死人に大慌ての学園長は放っておいて、僕らは向かい合う。

 女の子が持つのは鉄の刀、僕が持つのは水圧の剣だ。


「双方、合意と見てよろしいですか?」


 もちろん、僕たちはうなずいた。


「はじめ」


 女の子が瞬足で踏み込み、斬りこんでくる。水圧の剣と言っても、水は水だ。

 受け太刀の防御ごと、簡単に切り捨てて、僕を斬り殺せると思ったに違いない。

 でもさ、でもねえ……


「これ、重さ、何トンだと思う?」


 測ってないから僕も知らないけどね。僕の能力が許す限りのありったけさ。

 刀の刃が弾かれ、女の子がおどろき一歩をしりぞく。

 みじんも隙を見せないのは、剣士として洗練された振る舞いだなあと思うよ。

 でも、魔法って理不尽だからさ!


「【散花さんか睡蓮すいれんの型】とか言って」


 水圧の剣が爆散して、豪雨のように、あるいは濃霧のように女の子を包囲する。

 全方位、身動き取れないように水圧の刃に囲まれた彼女は……なおも気高く笑う。

 どこまでも裏切らない女の子の反応がうれしくて、僕も笑ってしまう。


「レベル9ってこういうことさ」


 学校なんて特待生じゃなくても、一般入試で入ればいいだろ?

 そして、血しぶきが舞い大雨が降る。この日、僕は人生ではじめて魔法で人を殺した。




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