第9話 どうせなら、あなたとおもいっきり
爆炎がぴたりと止んだ。
静寂。名乗りもしない勝者は、返り血さえ浴びずに立っている。
特待生を斬り殺した女の子は、刀の切っ先を払って僕を見た。
「私と勝負をしましょう! 剣の手合わせをおねがいします!」
明るい声の女の子が、僕の目をまっすぐに射抜く。
不誠実な僕には、まぶしすぎる輝きで、女の子は微笑む。
「私には夢があります。誰よりも強い魔法剣士になる夢です」
知ってるよ。さっき聞いたばかりだ。
レベル8を斬り殺したんだから、十分、満足だろうに。
なのに、この女の子は僕をまっすぐに見つめて、言う。
「私はこの夢を、あなたにも信じてほしい」
あまりにもあけすけな彼女の笑顔。
ほだされた僕は、不覚にも大真面目にたずねてしまう。
「信じたくないって、言ったら?」
「信じさせてみせます! 私の剣と、私の――“強さ”で!」
僕は水の魔法が使える。ちょっとだけ、ちょっとだけね。
だから、このうっとうしい女を水に沈めてやろうかと思ったけど……
僕は笑って、“剣”を手に取った。
水の剣、圧縮された水で形作った水圧の刃だ。
僕は衆人の視線を感じながら、前に出る。
言動一致しないバカ野郎だって笑うかい? ああ、僕はバカ野郎だな……
でもどうせなら、どうせなら。
「いいね。どうせなら、おもいっきり、バカな自分に裏切られてみたくなった」
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