第8話 レベル0、抜刀

 閑散としたグラウンドに、人だかりができた。

 剣士の女の子と特待生の決闘をひとめ見ようと、生徒たちが集まってきた。

 特待生の少年がゲラゲラと笑う。


「爆炎をあやつる炎使いの俺に、剣で挑もうって? 死ぬ気かよ」


 女の子はなにも答えない。魔法能力で作り出した剣を……かたなを鞘に収めたまま、静かにまぶたを閉じている。

 審判役として、特待生の勝利を確信する学園長立会人が良い笑顔で言う。


双方そうほう、合意と見て、よろしいですかな?」


 それぞれがうなずき、答える。


「はじめ!」


 特待生の少年が熱風を引き起こす爆炎を呼んだ。

 近づけば焼死あるのみの、おそろしい熱量の防壁だ。

 その圧倒的な威力と熱量操作の能力に、見守る観衆がいきをのむ。

 すげえなあ、炎を使う魔法は多々あれど、レベル8ってのはさすがに格が違う。

 審判役の学園長が、ゆかいそうに笑った。


「そういえば、あなたはレベル0でしたかな?」


 勝ち目なんて最初からないとでも言いたげに学園長がほくそえむ。

 ……だけど、女の子はまぶたを閉じたまま、みじんもうろたえることをしない。


「心頭滅却すれば火もまた涼し」


 抜刀、そして――


「【瞬剣しゅんけん・横払いの型】」


 そして、彼女は少年の首を斬り飛ばした。

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