第5話 僕の名は………!! 〇

クラス内で目が合った彼女に対し僕は…

「彼女から距離を取るか…」

…そう決意した


え?恋愛がしたくて

この痛い妄想世界に入ったのにも関わらず

ヒロイン候補(?)かもしれない彼女から

距離を取るのかって?


いや、よく考えてみてほしい

名前も知らないクラスの女子と目が合っただけで

驚いた様な表情をされたのだ


それはつまり妄想世界に入る前の僕と

何かしらの接点があった証拠ではないのだろうか…


え?タツヤは良いのかって?

タツヤに関しては話しやすそうな性格をしてるし

何よりも同性である

同性と言う事は少なくとも

気兼ねなく会話することもできる


しかし、彼女のことに関しては何も知らない上に

異性でもある為、下手な発言をしてしまうと

最悪彼女に嫌われたりする可能性もある


大抵の男子と違い

基本女子は繊細な奴が多いから

気を付けないといけない…


つまり面倒臭い!!



…うん、そう考えると

色々と面倒になりそうだから

今は彼女に対してアクションを取るつもりはない

そうなると必然的に距離を取る事にした


何より彼女はモテる(?)らしいので

そんな人物と仮に関わりを持ってしまうと

色々とやっかみもありそうだからね


まぁ…不幸中の幸いだったのが

目が合っただけで汚物を向ける様な視線に

変わらなかった事だろうか…


少なくとも彼女に対して僕は

嫌われてはいないと言う事だ


そんな事を考えてると

再びタツヤが僕に視線を向けてきた


「も・し・か・し・て……〇〇〇…」


「な、なんだよ…」


「彼女の事……狙ってる…?」


いきなり何を言い出すのやらこのバカは…


「は?そんな訳ないだろ…」


「じゃあなんで彼女の事を見てたんだよ~」

タツヤは目を細め口の端を吊り上げながら

僕に詰めてきた、正直うざい…。


「別にそういった特別な感情は彼女に

 対しては向けてないから」


「見てたことは否定しないんだ…」

少し呆れた様子で呟いた


そして、なんとなくではあるが

横目で彼女の事を見てみると

こちらを…いや、僕の事をガン見していた…


…………こっわ!!


今度は一瞬ではなかった

がっつり彼女は僕を見ていた


思わず顔を机に伏せ

僕は視界から彼女を移さない様に徹した


それにしても…心なしか僕を見ていた彼女の表情が

少しだけ悲しそうに見えた……


ん?

そういえば僕はこの妄想世界でなんという名前で

呼ばれてるんだろう…


好奇心を抑えられず、僕は伏せていた顔を上げ

机の中に入ってる教科書の類を調べてみることにした


そして…教科書の名前が

書かれているであろう欄を見てみると

全て文字化けしてた


完全にホラーやんけ……!


つまり僕の名前もタツヤと同じで

また1から考えないといけない訳である


…と言っても、現実世界の名前を名乗るのも

なんだか面白くないし、折角の妄想世界だから

僕は新たに自分に名を付けようと思う


妄想世界での僕の名は…



「シン」

瞼と閉じ念じる様に小声で呟いた



そして再び瞼を開け

先程見ていた教科書の名前の欄を見てみると

全て“シン”に変わっていた…

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