愛の在処

妃 妙

愛の在処



「大人になると生き辛くなる」


そんな言葉をよく耳にしたことがある


けれどどうだろう

私にとっては大人になってからの方が随分と生きやすい。


基本的に恋が上手くいっていれば人生幸せなタイプの恋愛体質人間だが、恋だって圧倒的に大人になってからの方が簡単だった。


今思えば学生の頃の私は真面目だったし、遠慮ばかりしていた。

人の好意に甘えることはとても苦手だった。


けれど、好意を無碍にされることが相手を傷つけることも知ったし、好意を受け入れることが相手のためになることもわかってきた。


そしてその方が愛されるのだ


あの頃の私にはそれが納得いかなかった。

だからこそ生き辛かった。


真面目で、遠慮して、常識ある私の方よりも、

少し抜けてても、わがままでも、甘えて自由なあの子の方が愛されるなんて不公平だと


今になればその理由ははっきりわかるのだけれど。


そうして私も少しずつ、わがままに、自由に、常識よりも愛嬌を優先して生きるようになった。


やっぱり今の方が生きやすい。


けれど、それって昔の私を傷つけていないのかな

誠実さを重んじる自分が大好きだった

そこにいつか見返りがあると信じていたから。


でもそんな考えは必要ないと思いなおすことができたのは今の夫と出会ったからだ。


真面目さも、誠実さも、過度な遠慮も、目的は

「愛されたい」ただそれだけ


甘えるのが苦手だった

真面目に頑張らなきゃって思ってた。


蓋をしてただけで、わがままも甘えも、私は元々したかっただけなんだよね。


過去の自分を捨てたわけじゃない


ほんとの自分を取り戻しただけ


私の求めた愛を、求める以上に与えてくれる

本当に彼と結婚できて幸せだと思う。


過去の辛かった恋も、傷ついた想いも

全部この出会いのためだったと思える。


やっぱり誠実に生きた私は間違ってはいなかった。

この幸せは、私に相応しい。とすら思える。



そんな私たちには子供が生まれる。


まだ性別もわからないけれど、どんなことがあっても幸せにしたい。


私が幼少期に求めた愛を、過不足なく与えたい。


愛に満ちて、なにより自分を愛して欲しい。


それでも辛い夜はきっと訪れる。

そんな日も、自分が愛されていることを思い出して欲しい。


どんな朝も、どんな夜もずっと愛し続ける。


世界で1番、幸せになれるよ。



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愛の在処 妃 妙 @kisaki_tae

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