第11話 空へ

 しようとしたのだが、

「戦っちゃだめだよぉ」

 かやが奮然としつつ、どこか寂しげな表情を浮かべていた。どう声をかけたらいいのか迷っていると、

「だからねぇ」

「ん?」

 かやは再び辰流の襟首をしっかりと掴むと、反重力なベクトルを生じさせ、枝から飛翔した。

「へ?」

 辰流は辺りを見回す。

 枝、というよりも木々はすでに足下数メートルの所にあり、コスプレ女子が見上げていた。

 空を飛んでいるのだ! 動力も翼もパラシュートもなく。心拍数も急上昇中。

 辰流が戦闘への意識を弱くしたせいか、はたまた驚きのせいか一反木綿は静かに辰流の包帯に戻っていた。

「かや……君は一体?」

 かやまでもその素性不明者に数えなければならなくなったが、

「それよりも早く逃げよぉっ」

 ちらりと横眼のかやを習って、後方を見た。あのコスプレ女子も負けず劣らず何の道具もなく、飛んで追って来ていた。

「もう、何なんだよー」

 辰流の嘆きは、

「スピード上げるよぉ」

 すっかり勢いづいたかやの耳には聞こえていなかった。辰流は、高速道路を滑走する自動車のスピードに肌身を包まれていた。

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