第3話助け合い

そのお年寄りは、飛んでもない行動に出た。

白髪のばあさんに300円借りた。

でも、後10円足りなない。

そのお年寄りは、

「どなたか、10円貸して頂けませんか?」 と、言った。

僕も、ツケで食べた経験がある。隣のお年寄りに10円貸してやった。

支払うとそのお年寄りは帰った。

すると、白髪のばあさんが僕に近寄り、

「お兄さん、いくら貸したの?」 

「10円です」

「お兄さん、必ず返してもらいや〜よ」

と、言った。僕はウンウン頷きながら、酒を飲んだ。


翌日、蛸ん壺に行くとそのお年寄りは、新聞を読みながら瓶ビールを飲んでいた。10円を返す事も無く、挨拶もしなかった。何て、ヤツなんだ。いつもの、白髪のばあさんが、

「あんた、このお兄さんに10円返したの?」

「えっ、この前貸してくれたのは、お兄さん?」

「そうですよ」

「ごめんなさいねぇ。顔は覚えたから」

と、言ってその日もツケで飲んでいた。

僕も経験者だから、何も言えないが、お金が無いのに、このお年寄り毎日店にいる。

だが、人情居酒屋たるゆえん。このお年寄りはツケで飲めるのだ。

誰でもツケは出来ない。一見さんでツケは出来ない。

長年、来店してある程度その人の人柄を確認してから、ツケにしてあげるのだ。

このお年寄りの事は、役所の担当者まで知られている。食い逃げは出来ないのだ。 


人生の晩年を楽しむ客、夜は若者の客。

色んな人種が集まる店。

44歳でも、僕は子供扱いされる店。

人情居たこ焼き居酒屋・蛸ん壺。

僕はこれからも通う。

大事にしたい店である。


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皆んなが集まるたこ焼き屋 羽弦トリス @September-0919

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