第5話

「えっと、今回潜るのは昨日とは別のEランクダンジョンです。前のとこはなんか封鎖されてたので仕方なく」


:誰のせいだろうねぇ?

:真っ赤な鱗を持った魔物と男の娘が原因じゃないかな

:サクたんも関与してんだぞ

:この様子じゃ気づいてなさそうだな……

:そこがいい


「じゃあ潜りたいと思います! レッツゴー!」


:ゴー!

:レッツゴー

:なんか起きろ

:流石に2日連続で何かは起きんやろ

:サクたんを信じろ。絶対なんか起きるぞ


 リスナーさんたちと楽しく会話をしながらダンジョン内を進んでいると、奥の方に人影が見えてきた。

 誰かが先に潜っていたのだろうか。


「これ、勝手に映したら迷惑になっちゃうよね?」


:自動モザイク機能オンにせい

:映りたくない人いるしね

:いや……でもあれ人じゃ……

:耳長くね?

:魔物だよあれ

:サクたん気づけー


 自動モザイク機能というのをオンにしようと手間取っていたので、コメント欄は見ることができていなかった。

 そして、いつの間にか奥にいた人影は僕の方に近づいてきている。


「あっ、すみません、実は配信してる者で……。映っても大丈夫ですかね?」

『ゴブ?』

『グギャギャ?』

「?」


 人影の正体は全身緑色の肌で、尖った耳を持ち、鋭い目つきをしている人だった。


「……なんか肌色が悪いようですけど大丈夫ですか? ピーマン食べ過ぎましたかね。ピーマン好きなんですか?」


:草

:魔物だよそれw

:魔物のこと知らな過ぎてピーマン食い過ぎた人間と思ってるww

:無知無知だね♡

:まぁ……ピーマンに似てるっちゃ似てるw

:ゴブリン=ピーマン……ってコト!?

:クソワロタ


「ゴブしか言えてないですよ!? 恐ろしいピーマン……やっぱりピーマンは人類の敵ですね……!」


:ピーマン嫌いなんだね^^

:【悲報】ピーマンを食べすぎるとゴブリンになる

:嘘つくなw

:ピーマン嫌いは解釈一致

:かわいい


 どうやらコメント欄曰く、ピーマンの食べ過ぎで肌が変色して脳みそがやられたのではなく、もともとこの見た目の魔物らしい。

 名前はゴブリンという魔物で、序盤に出てくる弱い子らしい。


「襲う気配ないけど、友好的な魔物なのかな?」


 ツンツンとつついてみても首を傾げてこちらを見つめるだけだ。魔物は怖いと言うイメージがコメント欄から感じられたけれど、これを見る限りそんなことはないと思える。


『グギャ』

『ギャギャッ!』

「え? なになに? 付いてきてほしいって?」


 僕の服の袖をつまんでくいくいっと引っ張ってくるゴブリン。強引に連れていかれている感じではなく、友人をどこかに招待するような感じに思える。

 ゴブリンたちが何を考えているかわからず、リスナーさんたちに助けを求めた。


「この行動、だれか知ってる人いますか?」


:知 ら ん!

:こーれ世界初の行動ですw

:ゴブリンって見かけ次第襲ってくるからなぁ

:サクたんがわからんなら分かるわけない

:俺たちをナメろ。思っているより馬鹿だぜ

:自分で考えなさい(ワイらに振るな)


 どうやらリスナーのみんなもわからないみたいだった。

 何が何だかわからないまま奥に進むと、他のゴブリンたちも集合して一緒に奥に進んでいっている。


「ゴブリンしかいないんだなぁ……」


:ゴブリンダンジョン?

:まぁEランクだしな

:ゴブリンなめてたら痛い目みるぞ

:結構残虐だからな……

:Eランってことはゴブリンか、ハイゴブリンくらいしかでねぇよな! ガハ!

:↑あっ

:↑あっ

:↑あっ……?

:君ぃ、フラグって知ってるかい?


 何やらコメント欄がざわついているが、どうやらゴブリンたちの目的地に着いたようだ。

 なんの変哲も無い大きな壁に見えるが、ゴブリンが不規則にノックをすると地響きがしだす。かすかにあった壁のひび割れが大きくなり、新たな通路が完成した。


「隠し通路! テンション上がるね〜」


:え………?

:これぇ……ヤバイでしょ

:【速報】男の娘ダンチューバー、Eランクダンジョンの新領域発見する

:ゴブリンにこんな知性あるのもおかしいだろ

:まさかアイツか?

:本人に至っては秘密通路にテンションアゲ状態w

:危機感の欠如で草

:襲われたらどうすんだ?

:↑俺たちの脳が破壊されるだけだ

:(ToT)


 どれくらい奥に進んだのだろう。そう思えるほど歩き、階段を下った。正直絵面が映えないからやめてほしいね。

 そんなことを思い始めた時、とうとう最奥まで辿り着いたようだ。


 蝋燭の灯り、整地された空間、荘厳な装飾……。一番奥に座る、王冠を頭に乗せる者。


「あれは……?」


:スゥーっ……

:ま、まじか

:サクたん=ダンジョン封鎖の申し子w

:これはBかAランクダンジョンにしなきゃならんぞ

:なんせアレは、ね?w

:初めて見たぞ俺

:まさかのかよ!!!!


「キング、ゴブリン?」

『……ゴブゴブ』


 どうやら、またとんでも無いことをしてしまったのかもしれない。

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