第4話

 ――翌朝。

 目を開けてスマホを確認すると、とんでもないほどの通知が来ていることに気がついた。


「…………ナニコレ」


 昨夜は週末で疲れてたし、スマホを確認せずに眠ってしまった。それのせいなのか、確認しても仕切れないほどの通知が並んでいる。

 そして今もピロンピロンと音を立てて通知が増えていた。


「こ、こわっ! 本当になにこれ!?」


 増え続ける通知に畏怖し、スマホをベッドに投げつける。カタカタと震えていると、今度は電話までかかってくる始末だ。

 恐る恐るスマホに近づき確認すると、そこには見慣れた名前が出ていた。


「り、涼牙……っ! もしもし、助けて涼牙! 今大変なことになってるんだ!」

『おー、なんかすげぇことになってるぜお前。おもしれ〜!』

「おもしろくないよ! 怖いんだよっ!!」


 電話越しの涼牙は僕を面白がっている様子で、ケラケラと笑っている。


『バズったってやつじゃね?』

「えぇ……? でも何でバズったのかな……。あ、もしかして昨日会ったあの人!?」

『それ半分だろ』

「え、じゃあもう半分って?」

『ドラゴン手懐けた事だろ』


 うーん……? ドラゴンを手懐けたらバズるのかなぁ? ダンジョンができて数十年経ってるんだし、手懐けてる人も沢山いそうだけど……。


『ま、お前はとことんダンジョンに興味なかったから常識がねぇよなぁ』

「失礼な。事実だけど」

『とりまお前にとって悪くないバズりだから安心したらいいんじゃね? 次の配信は盛り上がるぜ多分』

「次の配信何すればいいのかなぁ!? 怖いんだけど!!」

『質問コーナーからダンジョン潜ればいと思うぜ! お前に疑問持ってるやつが大半だろうしな』


 質問コーナーか……。多分次の配信ではすごい人が来るんだよね……そこでちゃんと答えられるかな?

 不安だ。


『何かあったら俺を頼れよな、親友!』

「うん、ありがとう涼牙」


 通話を切り、覚悟を決めて自分のチャンネルを確認した。


 ――総再生回数・8410万回再生。

 ――チャンネル登録者・86万人。


「ひぇえ……!!!」


 無名スタートの初配信で記録する数じゃないよこれ! い、胃が痛い……。


 今日は休日なので、配信する前に十分に心身統一できた。



###



「え、えーっとぉ……。みなさん昨日ぶり(?)です。サクたんです、どーもー……」


:キタ!!

:待 っ て た

:♪───O(≧∇≦)O────♪

:かわeeeeee!!!!

:推します

:昨日の配信見てないいけど昨日ぶりw

:待ってたぜぇ、この瞬間をよぉ!

:ガチ美少女で草

:このが噂のドラゴンテイマー?

:君は一体何者なんだい?(英語コメント)

:緊張してない?w

:ガチガチで草

:サクたん可愛い

:かわよ


 あ、あばばばばば! 人がこんなにもたくさん来てる……。一日でこんなに増えるなんて聞いてないよぉ!


 ――同接数・2.8万人


 明らかに異常なまでの数字が映し出されていた。無名で配信を始めた翌日に出てきていい数字ではないことは確かだ。

 岩盤みたいにガッチガチになりながら、早速配信をスタートすることにした。


「え、えっとー……。きょ、今日は初見さんもたくさんいるので、まずは質問コーナーからしたいと思います……。答えられる範囲までです。えっと、じゃあスタート!」


:なんでドラゴン手懐けられたの?


「え、多分、動物に好かれまくる体質だから、魔物にも適応された……のかなぁ? よくわかんないです……」


:ドラゴンの言葉わかるの?


「いや、明確にはわかんないけど、なんとなくならわかるかなぁ?」


:あまみやちゃんとその後なんかあった?


「あまみやちゃん……? すみません、勉強不足で……」


:デュフ、どこ住み?ハァハァ


「うわぁ……。言いません。帰ってください」


:女だろ


「いえ、正真正銘の男の子です。BANされないならここでズボンとパンツを下ろしたいです」


 と、まぁ、こんな感じで流れ作業みたく質問を受け取っては返してを繰り返し続けた。

 ある程度のことをわかってもらえたので、質問コーナーはここらあたりで終了しよう。


:サクたん男マ????

:だから言ったじゃん

:一向に構わんッッ!!!!

:一本お得だしね

:ズボンとパンツ下ろせェーーーー!!!

:下ろして(懇願)

:逆に唆るぜ

:ゴミを見る目助かる。どこ住み野郎には感謝

:こんなに可愛かったら魔物も堕ちるわなw

:あまみやchの処女厨ども悩んでんだろうなww

:相手が男でもサクたんがクソ可愛いから対応困ってらw

:あまみやchの豚ども、サクたんには手出しすんなよな

:サクたんのお兄ちゃんを遂行したい

:どけ、私はお姉ちゃんだぞ!


 なんだかコメント欄も楽しそうでよかった。この調子だったら順調に配信を進めれるかもなぁ。


 ――そんなことを思っていた時期もありました。

 まさかこのあといくダンジョンで、さらに視聴者たちの顎を外すことになるとは、到底思っていなかった……。

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