第22話:神殺し

 ――私の記憶。


 女神ソピアの生み出した新たなる神の姿は、巨大な半転環メビウスだった。何を考えているのかもわからない、回り続けるひねられた環だ。


 これが神の似姿にすがただとでもいうのだろうか。


 宇宙に飛び出した機兵アスタルテ。私はその中でその姿を呆然と見上げている。


 大佐は仲間に任せてきた。


 女神ソピアはサイレンがおさえている。


 今こいつを撃破できるのは私しかいない。


 多くの人々の命を吸って肥大化したそのは、私を値踏みするように眺めている――気がした。


「ソピア、お前のそのわがままな望みのせいで、私はあまりにも多くを失った」


 私の低い声がコックピットに響く。


「イシュタル! 一撃で仕留める! いいなユー・コピー?」

了解アイ・コピー。モジュール・ティルヴィング・レディ』


 機兵アスタルテが巨大な砲身に包まれる。


『願いは三度叶います』

「うん?」

『いえ、何でも。ただの神話です』

「洒落が効いてるな」


 エネルギーが蓄積されていく。


 周囲に無数のゼタが現れる。その手にした高出力ライフルから、無数のエネルギー弾が私たちに飛来する。


 宇宙の闇が輝きでつぶされる。


飛行砲台A・ビット展開! 対空防御!」


 セブンス、力を貸せ。


 目を閉じ、全ての攻撃を読み切る。展開した飛行砲台A・ビットが次々と蒸発する。だがそれでいい。


 ゼタは再び私たちを狙い撃つ。だが、こちらもチャージは完了している。


「イシュタル!」

『ティルヴィング・発動インヴォーク!』


 月すら破壊するのではないかというレベルのエネルギーが、機兵アスタルテから放たれる。それはまっすぐに神のようなものメビウスに突き刺さる。


 強烈な干渉で、宇宙が歪んだ。


 神が


 全ての物理法則が狂う。上下も左右も前後もなく、時間さえ整合性を失った。


 世界が終わる。


 ――私は悟る。

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