第39話 どうもありがとうございました
追い出しライブは、盛況のうちに全てのネタを終えていた。
トリを飾った瀬川と戸田のコントも安定して笑いを取って、会場を一つにまとめ上げていた。
スマートフォン越しでも二人の姿は輝きを放っていて、特に瀬川はもう二度とない舞台を、全力で楽しんでいるように碧には見えた。まるで一秒一秒、一言一言をじっくりと噛みしめるように。
瀬川たちがネタを終えると、観客が帰り始める前にすぐ、五人は全員で舞台に上がった。瀬川と筧を送り出すためだ。幸い観客はまだ多くが帰らずに、客席に留まってくれている。
まず戸田と碧が、事前に用意していた花束を二人に渡す。
そして、二人は最後の挨拶を述べた。筧は時折ボケを織り交ぜていたものの、瀬川はそんなことは一切せず、少し声を詰まらせながらも感謝を述べていた。そのどちらもが、碧の心を打つ。
一年しか時間をともにしていないにも関わらず、二人の話を聞いていると涙がこぼれてしまいそうで、途中からは堪えるのに必死だった。
最後に全員で改めてお礼をし、追い出しライブは終わった。
観客が全員帰ってから、碧たちは後片付けをする。
パイプ椅子を片づけたり、暗幕をはがしたりしていると、本当に終わったのだと改めて碧は実感する。今になって達成感が少しずつ寂寥感に変わっていく。
元の状態に戻った会場は、まるで追い出しライブがなかったみたいにしんとしていた。
打ち上げは今までと同じ居酒屋で、夜の七時半から開始された。
追い出しライブの振り返りから始まった話はどんどんと脱線していって、お笑いに関係のない話も混じってくる。でも、それは通常運転だったから、碧も何一つ遠慮することなく話に混ざれた。
最後の挨拶では少し湿っぽくなったが、今は無駄な話で全員が笑えている。
心が通じ合っていることを感じて、碧はウーロン茶しか飲んでいないのに気持ちよくなった。
二次会まで続いた打ち上げは、一一時より少し前にお開きとなった。
別れる間際、碧は瀬川とがっちりと握手をする。「これからもがんばれよ」との言葉に、碧も顔を上げて力強く返事をした。
新年度に入って最初の金曜日には、さっそく次の活動がある。清々しい瀬川の目は、碧の決心をさらに固めた。
瀬川や筧が部員全員との握手を終えたところで、長かった一日は終わり、五人は解散した。
それぞれの帰路へと散り散りになっていく部員たち。
手を振りながら三人と別れると、碧と筧はすぐそこに見える駅へと向かった。
一一時を回った駅はさすがに人通りが少なく、構内にも人は数えるほどしかいなかった。
上り線はあと二分で到着するようだ。そう長く留まってはいられない。
二人は改札の前で立ち止まる。最後なのに何の言葉も交わさないことは、碧には耐えられなかった。
「じゃあ、ここでさよならだね」
筧が単刀直入に言う。何度も脳裏をよぎった事実を突きつけられて、覚悟していたはずなのに碧は動揺してしまう。いよいよこのときが来てしまったかと、気温以上に寒気がする。
碧はそれらすべてを表に出さないように、努めて笑顔を作った。意識して口元を緩める。強がっていると見透かされてもよかった。
「そうだね。さよなら、なんだよね」
区切るように言った言葉は、現実を再確認する働きをして、碧にいっそうの哀切をもたらす。もうとっくに受け入れていたはずなのに、身体が小さく震えるようだ。
頭上からは「まもなく電車が到着します」と、アナウンスが降ってくる。冷静な声がまるで自分たちを引きはがすかのようだ。
だけれど、筧は改札をくぐろうとはしなかった。
「筧、どうしたの? 行かないの?」
「碧、もうちょっと話してよっか。大丈夫。電車は一〇分もしないうちにまた来るしね」
そう言うと筧は、ここじゃ邪魔になるからと、壁際に向かって歩き出した。碧も後をついていく。
二人が壁際に着いても、筧はすぐに口を開こうとはしなかった。ただ、碧の顔をじっと見てくるだけだ。
碧は顔を背けることはしなかったが、少し恥ずかしくなって視線を逸らす。これだけの間を置いて、いったいどういうつもりなのだろう。
二人が無言でいる間にも、電車は頭上にあるホームにやってきて、人を乗せて走り出していく。
電車の走行音が消えていき、改札から出る人がいなくなるのを待ってから、筧は再び口を開いた。
「今日、ウケてよかったね」
筧が切り出した話は、本当に何気ないものだった。
でも、今の碧にはそんなありふれた言葉でも、輝く宝石に違いない。
「うん、本当によかった。筧や先輩たちが保証してくれて、ネタ合わせも何十回と重ねたとはいえ、やっぱりちょっと不安な部分はあったから。しっかりお客さんを笑わせられて、今は安心してるよ」
「どう? 自分が書いたネタがウケた手ごたえは。想像以上だったでしょ」
「うん。今までもウケたときは嬉しかったんだけど、今日はまた違った嬉しさがあった。やってる最中はすごく楽しかった。今日みたいな気分なら、また味わいたいよ」
「そっかぁ。碧も自分のネタがウケる喜びを知っちゃったかぁ。これからもネタ書いていけそう?」
「うん、書くよ。筧がALOからいなくなっても、私はお笑いをやめない。たとえ一人だろうと、またネタを書いて舞台に立つよ」
「頼もしいね」。そう言って筧は微笑む。その言葉に裏表はなかったから、碧も鏡みたいに微笑みを返した。
今、二人の間を遮るものは何もない。真冬並みの冷たい空気も、二人を引きはがすには足りていなかった。
「私、筧に会えて本当によかった。ALOに入って本当によかった。だってALOじゃなきゃ、大変なことも含めてこんな楽しい思いできなかったから。あのときネタを披露してたのが筧じゃなかったらと思うと、ゾッとさえするよ」
「まあ今思い返すと、恥ずかしいようなネタだったけどね」
「そんなことない。今だから言うけど、自信満々にネタを披露している筧の姿に惹かれて、私はALOに入ったんだよ。大げさじゃなく、筧は私の未来を変えてくれた。運命を変えてくれた。本当に感謝してもしきれないよ」
「大げさだなぁ。別に私は大したことはしてないよ。ネタを書いたとしても、一人じゃ漫才はできないわけだしね。私が舞台で漫才ができたのは、碧がいてくれたからだよ。碧じゃなかったら、ここまで熱意を持って取り組めたか分かんない。私の方こそ感謝してるよ」
普段だったら恥ずかしくて言えないようなことも、このときばかりは自然に碧には言うことができた。筧の本心も知れて、心が満たされていくのを感じる。
「うん、ありがと。筧にそう言ってもらえるとめちゃくちゃ嬉しいよ。来週からの活動もがんばれそう」
「それはよかった。これからは別々の場所になっちゃうけど、お互いがんばってこうね」
「うん。筧、これからもよろしく」
決心が必要な言葉も、ためらうことなく碧の口をつく。
「これからも?」と訊き返す筧の不思議そうな表情が、碧には少しおかしかった。
「そう。筧、昨日『私との漫才も今日で終わり』って言ったよね。それ、私は違うと思う」
「違うって?」
「私も養成所行って、プロのお笑い芸人になるってこと。もちろん今すぐにってわけじゃないけど。だから私が養成所を出たら、今度はプロの舞台で漫才を続けよう。誰の目から見ても明らかな大爆笑を、いつか絶対とってやろうよ」
「碧、それ本気? 場の雰囲気で言ってるんじゃないよね?」
「ううん、違う。今日漫才が終わったときに思ったんだ。筧との漫才はいったん終わったけど、まだやりきってない。もっともっとウケたいって。もちろんALOでやり残したことはいっぱいあるから当分は藍大にいるけど、いつか私が養成所を出たら、またコンビを組んでくれたら嬉しいな」
碧はさらににこやかに筧に笑いかける。とびきり大きな願いをこめて。
少し戸惑っていた筧も、またすぐ笑顔を取り戻した。今まで見てきたいくつもの表情の中でも、一番爽やかな笑顔だと碧は思った。
「分かった。私待つよ。碧がやってくるまで、いくらでも待つ。だからさ、碧。改めてになるけど、お笑いやめないでよ。もっと経験を積んで面白くなった碧を、私は待ってるから」
「うん。筧もお笑いを続けてね。プロの世界は大学お笑いとは比べ物にならないくらい厳しいと思うけど、それでも私が追いつくまでは、ちゃんとお笑い芸人でいてね」
笑顔のまま筧は頷く。そして、右手を差し出してきた。
既に打ち上げの解散時に、碧と筧は握手を交わしている。でも、たった一回しかしてはいけないという決まりはどこにもない。
碧も右手を伸ばして、筧の手を握った。冷たい空気の中で、手全体に触れる三六度の熱が碧の心を暖めていく。
二人はお互いの目だけを見ていた。透き通った筧の瞳が、碧の胸の深いところに触れる。
自分たちはまた会える。なりたい姿で、また顔を合わせることができる。碧はそう信じて疑わなかった。
「じゃあ、私そろそろ行くね」
手を離して、筧は明るい声色で言った。気がつけば次の電車がやってくるまで、あと二分ほどに迫っている。もうすぐアナウンスも鳴り出すだろう。
だから、碧も小さく頷いた。これ以上ここに筧を留めておくわけにはいかない。
「うん、今日はありがとう。いや、四月からずっとありがとう。いったんは離れ離れになっちゃうけど、また会える日まで元気でね」
「うん、碧も元気で。あのさ、私碧があのネタ書いてくれたこと嬉しかったよ。そんな風に思ってくれてたことが、本当に嬉しかった。私も漫才の中で演じた〝先輩〟と同じ気持ちだよ」
「えっ、それって……」
碧がそう言ったところで、構内には電車の到着を知らせるアナウンスが流れ出す。よく通る放送は、二人にそれ以上の言葉を持たせなかった。
返事をする代わりに、筧はもう一度いたずらっぽく微笑んでみせる。その笑顔は、碧が最初に筧と話したときの表情に似ていた。
「そういうこと。じゃあ、碧。またね!」
「う、うん。またね、筧」
最後に短く言葉を交わして、筧は改札をくぐっていく。ホームへと向かいながら手を振る筧に、碧も小さく手を振り返した。
筧が階段を上って見えなくなると、すぐに電車がやってくる音がする。
碧は改札の向こうを見つめた。筧の姿はもうそこにはない。
だけれど、脳裏にははっきりと筧との思い出が焼きついている。かけがえのない経験を糧に、来週からの活動もまた前向きに臨むことができるだろう。
碧は電車が走りだすのと同じようにして、改札口から離れた。バスはもうないから、アパートまでは歩かなければならない。
でも、碧はそれでもよかった。寒風が吹く中でも、筧との漫才を思い出せれば、寂しくなかった。
歩行者信号が青に変わる。弾き出されたように、人々が一斉に歩き出す。顔も名前も別々の人々が一瞬でも交わる様は、まさしく人間の交差点だ。
それぞれの目的地に向かっていく人の波を、上野碧は駅ビルの前に立ちながら眺めていた。
新宿駅の南口は平日の昼間であっても相変わらず人が多い。上京してきたばかりの頃は、視線をあちこちに向けていて田舎者丸出しだったなと碧は述懐する。
でも、今は人の多さに目眩がすることはない。五年以上東京で暮らしてきているから、さすがに慣れたのだと思う。
自分がこの場所に馴染めていることが、碧には少し誇らしかった。
その人物がやってきたのは、碧が駅に着いてからおよそ一〇分後のことだった。「ごめん、碧。待った?」と言ってくる人物に碧は目元を緩める。
Tシャツに薄手のカーディガン、下は紺のジーンズを穿いているその姿は、碧の記憶の中にある彼女そのものだった。
「ううん、私も今来たとこ。久しぶりに筧と会えて、本当に嬉しいよ。元気にしてた?」
碧が問いかけると、筧希久子はにっこりと表情を緩めてみせた。少し子供っぽいところがある笑顔は、時間を経ても何も変わっていない。
「うん。碧も元気だった? って聞きたいとこなんだけど、ここで話しこむのはちょっと違うよね。カフェでも行こっか」
筧の提案に碧も頷き、二人は歩き出す。行くところは決まっている。高層ビルの前にあるカフェチェーンだ。
筧と一緒に歩いていると、まるでALOに一緒にいたときに戻ったように碧には思える。
店内に入ると、最後に訪れたときから一つも変わっていない内装が碧たちを迎えた。流れている音楽も初めて聴くはずなのに、どこか懐かしく感じる。
二人はそれぞれのドリンクを頼んで、空いている席に座る。シンプルなホットコーヒーを選んだ自分に対して、季節限定の長い名前のドリンクを選んだ筧が、碧には少しおかしかった。
「本当に久しぶりだよね。三年ぶりくらいだっけ?」
「違うよ。私が養成所に通ってた期間もあるから、四年ぶりだよ」
ボケなのか本気なのか分からない筧の言葉に、碧はすかさずツッコむ。筧は恥ずかしそうに笑っていたから、碧も自然に口元を緩めた。
一つ言葉を交わしただけで、碧には四年もの時間を、一瞬にして飛び越えてしまったかのように思える。
目の前に筧がいる状況は、碧にはこれ以上ないほどリラックスできるものだった。
「そうだったね。碧、改めて養成所卒業おめでとう。どうだった? 養成所での一年は?」
「楽しかったこともあるけど、それ以上にきつかった思い出の方が多いかな。授業についていくので精一杯だったし、同期にも私よりも面白い人は何人もいて。やっぱり大学お笑いとプロのお笑いは違うんだなって、思い知らされる日々だった」
「そっか。私も同じようなもんだったから、その気持ちわかるよ。でも、やめずに一年間通い続けたんでしょ。それだけで偉いじゃん」
「まあ、筧との約束があったからね。しんどいときでもそれが支えになって、なんとかがんばれたよ。ところで筧は? 今はピンで活動してるんだよね?」
「まあね。でも、うまくいってるとは言い難いかな。劇場とか営業で舞台に立たせてもらう機会はあるんだけど、それよりもバイトしてる時間の方が全然長くってさ。もうほとんどフリーターだよ。大変なのは分かってたけど、ここまでとは思ってなかったな」
「でも、筧もやめなかったんでしょ。それも三年間ずっと。それって凄いことだよ」
「いやいや、もっと長い時間がんばってる先輩だっているんだから、私なんて大したことないよ。まあしんどいときはいくらでもあったけど、それでもやめようとは思わなかったかな。まだ何も残せてないし、何より碧との約束を破ることになっちゃうからね」
筧の言葉には真実味があって、いっそう碧の心を温めた。自分が筧をお笑いの世界につなぎとめるロープになれていたことが、感慨深かった。
ドリンクを一口飲んで、筧は再びはにかむ。柔らかな表情が、碧の全身を駆け巡っていく。
「ところでALOはどう? 去年、碧主務だったんでしょ」
「うん。今も続いてるよ。あれから年を追うごとに、新入部員も入ってきてくれてさ。今じゃ一二人もいる。みんな真面目にお笑いに取り組んでくれるいい後輩たちだよ。サークルの雰囲気も良好だし、私も安心して卒業できた。まあ今年のKACHIDOKIも、準決勝で敗退しちゃったんだけどね」
「そっか。活気あるサークルになってるようで、私も嬉しいよ。私が所属していたっていうのがアピールポイントになるように、これから余計がんばんなきゃ」
「ちょっと、筧。私じゃなくて、私たちがでしょ。私だってALO出身なんだから」
「ごめんごめん。そうだったね。私たちOGもがんばって、ALOの価値を高めていかなきゃね」
筧がそう言って、碧が頷いたところで、いったん会話は途切れた。間を埋めるようにドリンクに口をつける二人。碧が筧の言葉を待っているように、筧も碧の言葉を待っているのだろう。
どちらから切り出すか。お互いに譲り合っているような時間も、碧には苦にならなかった。
「……えっと、じゃあスケアクロウ再結成する?」
慎重に尋ねるように切り出した筧に、碧は思わず吹き出しそうになる。
「何、その言い方。そのまんますぎない?」
「だってこういうのって、どうやって言えばいいか分かんないじゃん。私昨日ずっと考えてたけど、これだって言い方が思いつかなくてさ。シンプルに言うのが、一番早いと思ったんだ」
筧はまだ少し恥ずかしそうで、本当に真面目に言い方を考えていたことが碧にも伝わった。
飾り気のない言葉が、碧の心にピタリとはまる。返す言葉は一つしかなかった。
「そうだね。変にかっこつけるのも違うもんね。分かった。スケアクロウ再結成しよう。私は、また筧と一緒に舞台に立つよ」
碧を、筧は疑うことはしなかった。まるでそう答えてくれることが分かっていたみたいに、頷いている。
微笑みながらも目の奥は真剣な筧に、碧は身が引き締まる思いがした。
筧との約束を果たせた感慨は、もちろんある。でも、それ以上に頭は未来のことを考えていた。大変なことや辛いことは、数えきれないほどあるだろう。もしかしたら大きな喧嘩もするかもしれない。
でも、碧はその全てを筧と乗り越えたいと思った。乗り越えられるかどうかはわからないけれど、立ち向かっていきたいと思った。
「ありがと。碧ならそう言ってくれるって信じてたよ」
「うん。私も筧とまたコンビが組めて嬉しい。私はKACHIDOKIの決勝に進めなかったし、筧もまだミルネには行けてないでしょ。だから、どれだけ時間がかかっても、絶対に二人でミルネの舞台に立とうね」
「碧、それは違うよ。プロになった時点で、もうミルネは目指す場所じゃない。私たちが目指すのはN-1優勝。ただそれだけだよ」
筧の口から出た目標に、碧は驚いてしまう。でも、筧の目は大真面目だった。こういう高い目標を臆面もなく掲げられるのは、筧の最大の長所だと碧は思う。
「N-1優勝とは、また大きく出たね」
「だってそうでしょ。結成一五年以内の全ての漫才コンビが対象なんだから、当然私たちも含まれているわけだし。私は誰よりもウケたいの。碧と一緒に一番の笑いを取りたいの」
「分かった。私もN-1優勝目指すよ。別に筧に言われたからじゃない。私自身の意志で、てっぺんを取りにいく」
「ありがと。碧にそう言ってもらえると、私も元気が出てくるよ。今は口にするのもおこがましいような目標だけど、いつかきっと実現できるって思える。じゃあさ、これ飲んだらさっそくネタ合わせしよ。私、碧と新しくやる最初のネタ、もう書いてあるんだ」
「そうだね、やろう。久々にやる筧のネタ、私も楽しみ」
「うん、期待してくれていいよ。場所は碧の部屋でいいよね?」
「えっ、私? 筧の部屋でやるもんだと思ってたんだけど」
「いや、今ちょっと部屋散らかっちゃっててさ。碧を入れるには、少し片づけなきゃなんないんだよね」
「何それ」。そう言って碧は笑う。筧もつられるようにして笑う。騒がしい店内の中で、二人のテーブルには和やかな雰囲気が流れる。
碧は笑いながら、筧の顔を今一度見た。
どこまでもいける。二人ならどこまでも駆け上がれる。
晴れ晴れとした表情に、碧はそう確信していた。
(完)
スケアクロウに憧れて これ @Ritalin203
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