テーマの提示(1-1)/へぇ、デートかよ
『怪塵事件にカトルカール連続出動』『クロックは犯罪者?』『犯罪者クロックに出頭せよと市民の声』
『ピーターパンの飛行ショー大盛況』『未確認怪塵の目撃』『強盗事件が都内だけで10件怪塵現象の火事場泥棒か』
半月が経った。
相変わらずSNSではクロックの話題は悪い方向でしか見当たらない。
「はぁ」
ため息を付いてスマホを閉じる。
ガタンガタンと心地よく揺れる電車の窓から、外を眺める。
本日は休日、混み合った電車に乗りながら佑駆は買い物に遠出していた。
この半月、佑駆はどこにでもいる一般男子高校生だった。
学校にいって勉強をして、ダチと喋って、授業を受けて、下校する。
学校帰りに買い食いをしたり、新しく本が出てないか本屋を冷やかして、誰もいない家に帰って家事をして寝る。
復習をちょっとだけしたり、テレビを見たり、ゲームをしたりする。
今はまだ日課にしている十キロジョギングを続けているが、いずれやめてしまうのだろうか。
そんでもってまだ部活は決まらない。
佑駆の学校は部活系に力を入れているが、その中に
そんなのをやってるのは国内にたった一つだけある俳優専門の育成学園だけだ。
30年前から世界各地でポツポツと
その時代に出現したのは五人の能力者。
【最初にして終わりの五人】
現状100万人に一人の確率で産まれると言われる
そんでもってこの超人は数千人しかいない。
この日本だけではない、全世界でだ。
しかも能力の強弱も個人差がある。
佑駆などぶっちゃけ下から数えたほうが早いぐらいの弱い能力だと自覚している。
魔法としか呼ぶしかないなんでもありな力を使える
鋼鉄よりも硬く、並み居る怪塵を滅ぼしてきた
空を自由自在に舞い上がる
超人の中の超人と呼ばれる
光と共に駆け抜ける最強の使い魔を操る
日本の中でもこれだけヒーローがいるのだ。
ヒーローと戦うことなんて偶発的なものを除けば一度も自発的にしなかったが、佑駆との能力差は隔絶していた。
(そう考えるとますますオレいらなかったな)
幸い今まで正体もばれたことはないし、スカウトしてくるような声も、法律無視して能力を使うヴィランとして逮捕しにくるヒーローにも、この逃げ足で逃げ切ってきたが、じわじわと罪悪感が湧き上がってくる。
(ぁぅあー、やばいストレスがががあ)
最近寝る時にも思い出しては中々寝付けない。
おかげで最近は寝不足だ。
いや、あの時からずっと胸の内をもやもやとしたものが溜め込まれている。
このままではまずいと自覚があった。
「ふぅ、ん? やば!」
電車のチャイムに、電光表示を見れば降りる予定の駅名。
(やば、能力使うか?)
一瞬能力を使うか迷いかけて。
(いやだめだろ! 自重しろ!)
人命がかかってない時は能力は使わない。
人混みにすいませんと声をかけながらなんとか電車から佑駆は降りた。
もみくちゃにされた格好と息を整えながら、駅を出る。
そして、改札から出て、手を振っている待ち人を見つけた。
「よっ」
「おっす」
青いペンギン型のリュックに、白いキャップのついた帽子、起伏のないTシャツに筆文字で書かれた「一石二鳥」の四文字熟語。
クリクリとトレードマークの黒縁眼鏡をつけた傍目から見ると美少女の、実質オタクガールな海璃だった。
「遅いぞ~」
「15分前なんだが?」
「遅いせめて1時間前だ」
「横暴過ぎない? お前ごときが俺とデートしようなんて段階飛び越えてるんだが??」
「セクハラで訴えたら勝てるのは私なんだが??」
トトンと踵を鳴らして、赤いシューズを履いた海璃が振り返る。
「んじゃいこっか」
向かうのはこの近郊では一件しかない店。
「ヒーローショップ♪」
ニッと微笑んで海璃は目的地を告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます