第5話 はーくん
☆(長住隼人)サイド☆
これはあくまで一回しか聞いた事が無いが。
桜と春は血が繋がってない。
それはどういう意味かといえば姉妹だが姉妹では無いのだ。
だからこそ春も桜も薄情な感じを見せれるんだと思うが。
「.....お兄ちゃん。今日は付き合ってくれてありがとうね」
「いや。結局そのほとんど曖昧な感じになってしまったけどな」
「それで十分だよ。本当に感謝しかない」
「そうか?.....なら良いけど」
「私は.....お姉ちゃんの口から『変わる』という言葉が聞けただけ良かったよ。.....変わってくれれば良いけど」
そんな会話をしながら俺達はショッピングモールを後にしてから帰宅する。
その途中で春は俺を見上げてくる。
「お兄ちゃんは.....その。今.....傷付いているよね」と俺に言ってくる。
俺は「そうだな」と返事をする。
すると「じゃあちょっと寄りたい場所がある」と俺の手を握る春。
「え?どこに行くんだ?」
「公園の先の立ち入り禁止の柵を越える。.....それから少し行った所」
「いや待て。それは良いのか!?」
「良いの良いの。壊れているしね柵って言っても」
「何があるんだ?」
「消火用の水があるけど風景が良いの」
そして公園に連れて来られ俺の手を握ってから柵を越えてからそのまま前を見る。
そこに.....煌びやかな景色があった。
太陽に照らされて反射する水。
そして静かな木々の動き。
更に心地の良い地平線の様な場所。
俺は衝撃を受けた。
こんな場所があるなんて、と。
立ち入り禁止だから普通は入らない。
そんな事を思いながらだ。
「この場所は私と桜しか知らないと思う」
「.....あとは湖の管理者ぐらいか」
「うん。.....だから滅多に人が来なくて良い場所なんだ。ここ」
「良いけど立ち入り禁止だぞ」
「.....うん。気にしない気にしない」
言いながら春はニコッとして前を見る。
すると春はポツリとこう呟いた。
「何でだろうな」とだ。
俺は聞かなかった事にしてから「春。良い景色だな」と呟く。
春は「でしょ!?」と明るい顔をした。
「.....本当に良い景色だ」
「だよね?.....私好きなんだ。この場所からの景色」
「そうなんだな。.....でもよく怒られないな」
「タイミングがね。すぐ帰ってるから」
「それか見逃しているだけか」と言いながら立ち上がる春。
それから俺に対してニコッとする。
「お兄ちゃん。じゃあハグしようか」と言いながら.....は?
ど、どういう事だ。
「お兄ちゃんに秘密を教えた。その分の料金」
「.....いや金取るのかよ!?」
「そうだよ?取らないとおかしいでしょ?」
「ひっでぇな.....」
「だから私を思いっきりぎゅーってして?」
俺は20センチぐらい身長が違う春を見る。
それから思いっきり俺は抱きしめた。
そして途中で小っ恥ずかしくなって「も、もう良いか」と言う。
すると春は「うん。ありがとう。お兄ちゃん」と柔和にそのままなった。
「.....私は.....お兄ちゃんが大切だから」
「そ、そうか」
「.....私は桜のやった事は絶対に許せない」
「.....そうか」
「だけど決めた。.....桜の事を気にしないで遠慮無しで攻めるって」
「.....ん?それはどういう意味だ」
俺は「?」を浮かべながら春を見る。
すると春は「言葉通りの意味だよ?私はお兄ちゃんが好き」とニコッとまたしながら言ってきた.....はぁ!!!!?
唖然としながら俺は動揺する。
春は「気が付かないなんてウブだねぇ」と揶揄う様に言ってくる。
俺は動揺に動揺を重ねる。
「お、お前!?そんなの.....」
「何?許されないって?そんな馬鹿な。今のお兄ちゃんはフィリーダムでしょ?」
「それを言うならフリーダム.....じゃない!マジかお前!?」
「私の恋は昔からだよ?マイブラザー」
「.....!?」
その言葉を受けながら目の前の春をまた見る。
だが恥ずかしくて見れなくなった。
まさか春まで俺を好いている.....とは思わなかったからだ。
思いながら俺は汗をかく。
それから春に赤面する。
「.....ふふふ。マイブラザー。どうも恥ずかしがっている様だね?」
「そうだな!あったりまえだろ!!!!!」
「だがそれも私の計画。.....ねえ。マイブラザー」
「.....な、何だ。春」
「私はお兄ちゃんの呼び名を変えたいと思います」
「.....は?.....ど、どうするんだ」
「はーくんって呼んでいい?」と満面の笑顔で春は俺を見る。
馬鹿野郎かコイツは。
そんな小っ恥ずかしい.....。
思いながら俺は春を見る。
すると春はニヤァッとした。
それから「だからはーくんは私を春ちゃんって呼んで?」と攻めてくる。
「.....そんなの無理だろ。.....お前な.....」
「まあどっちにせよ私ははーくんって呼びますが」
「呼ぶな!?」
「呼びますよー。だって私が大好きな相手ですから。呼び方がお兄ちゃんなんて単純すぎるしね」
「じゃあせめて隼人にしてくれ.....」
「それだと呼び方がお姉ちゃんと被りまーす。だから私ははーくんで」
「グゥ.....」
何も言えなかった。
そして春はその日から俺をはーくんと呼び始めた。
それから俺達は立ち入り禁止の柵を越えてからそのまま帰宅した。
しかし困った.....はーくんって。
それも好きって。
どうしたものか.....。
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