姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~
第155話 腹ごなしの後は、実技試験の対策を
第155話 腹ごなしの後は、実技試験の対策を
――時刻は午後一時。
邪魔者対策会議を終えた俺達は、食事の用意ができたと言うアイサに呼ばれて、下の階へ降りて食堂へ向かった。
ちなみに、ろうそくの明かりで照らされているだけの会議室に入ってきたアイサは、開口一番「なんですかこのカルト空間」とドン引きしていた。
あえて言わせてもらうが、それはこの一時間俺がずっと思っていたことである。
それはともかく、俺達は食堂で昼食をとったのだが、流石は伯爵家と言うべきか。
ただの昼食とは思えないほど豪華なコース料理だった。
前菜のエビとアボカドのサラダから始まり、ブイヤベースのトマトスープ、鹿肉のステーキ、桃といちごのアイスクリーム。
一見よく見るメニューでありながら、厳選された素材と手間暇を掛けた調理が垣間見える、一級品と呼ぶに相応しい味だった。
もっとも俺やマクラなんかは、つい先日一流ホテルや皇女様の別荘で豪華な食事を堪能させてもらったから、慣れてしまって然程驚かないという大変贅沢な悩みを抱えているが。
サリィの家に仕えているコック達の腕が確かなのは、フランとサルムの瞳の中に終始お星様が浮かんでいたことから、わかって貰えると思う。
そんなこんなで食事を終え、少しの間お喋りをして食べ物の消化を待ったあと、俺達はサリィに案内されて屋敷の裏庭へ向かった。
午後は、実技試験の対策を行うのである。
「つきましたわ」
屋敷の裏へ回ったところで、先頭を歩くサリィが足を止めた。
中庭は表の庭とは違い、かなり殺風景と呼ぶべきものだった。
観葉植物がまばらに植えられている他、休憩所として機能するベンチがあるくらいだ。
雰囲気としては、庭というよりグラウンドに近い。
広さは学校の円形闘技場より気持ち大きいくらい。
こういった修行に適した空間が存在するのも、おそらく一人娘のサリィが武闘派だったからなのだろう。
「ここで、試験の対策をするんですよね?」
「ええ、そうですわ」
フランの問いに、サリィが答える。
「まずは小手調べとして、ワタクシとリクスさんで戦いますわ。リクスさん、手合わせをお願いしてよろしいですの?」
「ああ、構わない」
俺は二つ返事で彼女の提案を受け入れた。
とすると、あれだな。これは編入初日の対決以来、二度目の直接対決になるわけだ。
今まで彼女の戦いは何度か見てきたが、明らかに成長している。
彼女にとってはリベンジマッチとなるだろうし、どれくらい強くなったのか少し楽しみだ。
俺達は互いに中庭の中央へ移動し、数メートルの間を開けて向かい合った。
「ルールは、先程会議で決めた通りでいいですわね?」
「ああ。制限時間は五分。相手を行動不能にするか、「参った」と言わせた方の勝利。基本は通常の模擬戦と同じだけど――俺は、魔剣と聖魔剣を含めた斬撃武器を一切使わない、でいいんだよな?」
「ええ。その代わりワタクシも、風属性魔法は使いませんわ」
サリィは、腰に吊したレイピアを抜きながらそう言った。
この特殊ルールこそが、会議で決まった特訓法である。
実技試験には技能検査がある関係上、得意分野を伸ばすのが必至。もちろん当初はみんなで得意分野を伸ばす方向で模擬戦をする予定だったが、邪魔者対策会議を行った結果、当初の予定から大きく様変わりすることとなった。
よって、俺とサリィは得意な武器や魔法を封じて戦う方向にシフトしたのだ。
全ては、邪魔者達による妨害を返り討ちにするための布石だ。
「得意な魔法を封じたとはいえ、以前までのワタクシとは違うことを見せて差し上げますわ」
「うん、楽しみにしてる。俺も、力を封じられた分、手加減はあんましないからそのつもりで」
「もちろんですわ」
サリィは、ニヤリと不敵に笑った。
一瞬の間、俺達の間を静寂が支配する。
張り詰めた緊張感の中、最初に動いたのはサリィだった。
「やぁっ!」
レイピアを持ち、“
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