第140話 期末試験の概要
いや、待て。
最悪赤点をとったとしても、補習地獄で済むと考えれば……いやいや、怠惰を極めし俺が、夏休みというスーパーぐーたらスペシャルバケーションに学校へ行くなど、言語道断。
ぐーたら界の名誉会長として、恥ずべき行為である。
諦めてこの二週間をゲーム三昧で過ごし、夏休みの一ヶ月を補習で潰すか。
はたまた、二週間全力で勉強し、夏休みに遊びまくるか。
その二択を外すほど、俺は落ちぶれちゃいない。
「これは、頑張るしかないな」
俺は、残念ながら知ってしまったのだ。
世の中、楽をしたいなら時に本気を出さなくてはいけないと。
勉強をサボって底辺の魔法学校に入ると、後々就職で苦労すると聞いたことがある。
それこそ、一日16時間労働で、ひたすら魔力を絞り出して魔法薬を作るだけのやりがいも達成感もない、地獄のような仕事に就かされる危険性すらあるという。
つまり、俺は後で楽をするために、最初に苦しむ覚悟を決めたのである。
「うん。私も頑張らないと」
フランも、可愛くガッツポーズをしつつ意気込みを見せる。
「期末試験の概要が書かれたプリントが今日配られたから、渡すね」
「サンキュー」
フランが差し出してきたプリントを受け取り、目を通した。
――。
ラマンダルス王立英雄学校、前学期期末試験
実施期間:8月3日、4日
一日目:筆記試験
国語、数学、古代語、魔歴基礎、魔法理論学 (選択科目:薬学A、龍言語、世界史Ⅰ)
二日目:実技試験
技能検査・模擬戦闘試験
※試験対策期間は、試験開始二週間前から始まります。対策期間中は、午前授業で終了となります。午後は各自試験勉強に励んでください。
※試験対策期間中は、学校図書館、自習室、闘技場、体育館、及び学生食堂の解放時間を、平時18:00までのところ20:00までに延長します。ぜひ積極的に利用してください。
――。
以上が、この試験の概要らしい。
フランの追加説明も聞きつつ、詳細をまとめると以下のようになるようだ。
まず、一日目の筆記試験は“国語、数学、古代語、魔歴基礎、魔法理論学”の一年生必修5科目+選択科目の“薬学A、龍言語、世界史Ⅰ”から自分のとっている1科目の試験を受けるようだ。
俺は、世界史Ⅰをとっているから世界史Ⅰのテストを受けることになるな。
ほとんど内容を覚えていないが、世界史は暗記科目だし、二週間で頭に詰め込めばなんとかなる……たぶん。
薬学Aとか龍言語とか、見るからにムズそうな科目を選ばなかった過去の自分よ、ナイスだ。
二日目は、実技試験。
実技試験は、技能検査と模擬戦闘試験の二種類。
技能検査というのは、実技の能力を測定する試験らしい。
ただ、これに関しては大多数の生徒が問題なく合格するようだ。
実技科目には、剣術学や槍術学、魔法実践学、回復魔法医学など、複数の実践型科目があり、その中から自分の学びたい科目をとることができる。
つまり、生徒によって選択する実技科目は違うのだ。
よって、試験において公平を期すため、自分の一番得意な実技で試験を受けることができるのだ。
俺なら攻撃魔法、サリィならレイピアが得意だから剣術、サルムなら回復魔法といったところだろうか?
模擬戦闘試験は、読んで字の如く、教師もしくは試験官となる上級生との模擬戦を行う試験だ。
これについては、概ね編入試験と同じだから説明は割愛する。
「なかなかのハードスケジュールになりそうだ」
「ですね……正直、憂鬱です」
ははは、とフランが苦笑しつつ、肩を落とす。
「大丈夫よぉ。リクスちゃんなら余裕で突破できるわぁ。なんたって、私の弟だものぉ」
自信満々に言ってくれちゃってるけど、ハードル上げないでくれ姉さん。
俺は内心でため息をつく。
試験まで残り二週間。
もはや一刻の猶予も許されない。
「余裕で突破は正直無理そうだから頑張るしかないな。お互い頑張ろうか」
「はい。共に清々しい夏休みを迎えましょう」
俺とフランは硬く握手を交わしたのだった。
――。
その後、フランが帰っていくのを見届けた俺は、う~んと大きく背伸びをした。
「さて。じゃあ俺も、勉強するかなぁ……頭痛いし、めんどくさいけど」
熱は完全にひいていないが、さっきよりも大分楽になった。
自室に戻り、少しでも勉強――しようとしてあることに気付いた。
「あれ。そういえば俺……置き勉してるから家に教科書とかないんじゃん!!」
【悲報】 教科書、全部学校にある件。
こうして、試験対策期間初日と、公欠をもらっている翌日は、何も出来ずに過ぎていったのだった。
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