第127話 リクス&シエンVSエリス
「喰らいなさいな!!」
エレンは裂帛の気合いと共に、手にした
それは、魔力で形作った巨大な刃を解き放ち、俺達へ向けて迫り来る。
並みの魔力障壁なら、一撃で破りかねないその威力だが、しかし。
起動するは、固有魔法“
並みの攻撃なら余裕で耐えるその光の障壁が、俺を中心に展開される。
その範囲にシエンも巻き込み、魔力の刃を真っ向から受け止める。
キィイイイン!
甲高い音が鳴り響き、光の障壁に横一文字のヒビが入った。
「げぇ……マジか」
俺は思わず辟易してしまう。
シエンの攻撃で軽々破られていたこの権能だが、それは相手が人智を越えた力を操っていたからだ。
薬で強化したとはいえ、ただの人間の魔力でここまでやるとは。
言うなれば、人間のまま人間を辞めた存在、というところか。
俺は咄嗟に障壁を解除し、シエンに散開を命ずる。
エリスは、その状況にほくそ笑んだ。
「あははっ! 自分から庇護対象を見すてるバカが、どこにいるのよ!」
エリスは、俺ではなく反対側に回り込んだシエンを狙う。
多対一は、各個撃破。その際弱い人間から始末するのが鉄則だ。
しかし――
「バカはあんただ」
「なに」
「死んで欲しくない、ただの守るべき存在なら、最初っからこの戦いに巻き込んでないよ」
「は?」
エリスは訝しむように眉根をよせる。
しかし、己の信じるままにエリスは
猛烈な魔力の塊が、ギュンギュンと唸りを上げてシエンへ肉薄する。
「きゃはははは! ミンチになりなさいな――」
「――“我、かの攻撃より強く”――」
シエンは駆ける速度を緩めず、むしろ自分から攻撃に当たりに行った。
しかし、彼女の身体は一切の傷を負うことはなく。
逆に、魔力の刃の方が光の粒子になって崩壊した。
「なっ――!」
その光景に、エリスは目を剥く。
シエンの手には、未だ漆黒の剣が存在していたからだ。
「――なるほど。さっき、何が起きたのかはよくわからなかったのだけど、奪われたのは聖剣だけなのね! 忌々しい!」
エリスは舌打ちする。
その間にもシエンと俺は、エリスめがけて肉薄する。
けれど、エリスは慌てない。
人智を越え、簡易的ながら神の領域に届く魔力を練り上げ、全身を魔力の繭で覆う。
それは、俺の権能“
「そんなもの、僕の“傲慢”の前では関係ない! ――“斬、障壁を貫く”――」
俺より先に攻撃圏内へ入ったシエンは、エリスを覆う卵の殻のような、半透明の障壁を魔剣で斬る。
エリスの県央の前では、障壁の強度など無意味。
ダイヤモンドですら紙切れ並みの強度に成り下がる、絶対的なルール改変。
当然、斬撃は障壁を容易く破り――なのに、シエンの攻撃はエリスに届かなかった。
「なっ……攻撃が通らない!?」
「甘いわ。今、あなたは障壁の一つを斬っただけ。この障壁はね、魔力波長や次元、強度、物質、質量……あらゆる条件の異なる七つの障壁を重ねた、多次元結界なの。あなたの権能が壊したのは、表面の一層だけ」
「くっ……なら、あと六回攻撃を――」
「無駄ね。壊されたら、私に近い場所から再生される。あなたに壊された障壁は、一番内側に再展開されているの。どう足搔いても、これを壊すのは不可能よ」
「くっ……」
シエンは悔しげに歯噛みする。
その様子を見て、エリスは満足げに舌なめずりをし――
「なら、これは通るんじゃないか?」
俺の発した声に、エリスが振り向く。
俺は、既に一足一刀の間合いに入っていた。
そして――無造作に左手に携えた剣を振り抜く。黒真珠のような
「“
瞬間。
魔力も力も込めていない刃が、七層全ての障壁を容易く貫通して、エリスの右腕を切り飛ばした。
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