姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~
第14話 編入初日から目立ってしまう!?
第14話 編入初日から目立ってしまう!?
ラマンダルス王立英雄学校に到着した俺達は、敷地の奥の方にある一年棟へと赴いた。
無駄に広い敷地には、一年棟~三年棟までの各棟に加え、教師棟と管理棟が、上から見るとまるで五芒星の頂点のようになる位置関係で存在する。それらの中央にはいくつかの実技演習場と呼ばれる闘技場が点在している形だ。
それらの闘技場は、俺が実技試験を受けた場所でもある。
「僕は一年Eクラスに編入になったけど、リクスくんは?」
「俺? 俺は……」
一年棟の長い廊下を歩きながら、俺は姉さんから渡された資料を取り出して目を通す。
「一年Cクラスみたいだ」
「じゃ、じゃあ私と同じクラスですね」
「お、そうなの。よろしく」
俺はフランさんと同じクラスか。
この
「それにしても、リクスくんは凄いね。まさかCクラスなんて」
「そうなの?」
「はい。Sの特進クラスから最底辺のEクラスまで6つあるのですが、編入生は最高でもCに配属されると決まってますから。大抵の編入生はEクラスからのスタートなんです」
サルムくんの言葉をフランさんが引き継いだ。
「ふ~ん、そっか」
「でも、リクスくんの強さなら、すぐにSクラスまで行っちゃいそうですね。学期末にある昇級試験で優秀な成績を収めたり、何かしら大きな実績を積んだ人は、上のクラスに昇級できるんです」
そこまで言うと、フランさんは興奮したように俺の方を見た。
「私、リクスくんの試験の様子見てました。凄く強くて、ビックリしちゃいました。ウチの序列二桁の先輩方を相手に、一方的な試合を展開していく姿……格好良かったです」
「……へ? 今なんて?」
「え? あ」
俺が聞き返すと、なぜか急に顔を真っ赤にしたフランが、両手をブンブンと振りながら慌てだした。
「あ、そ、その! 格好良かったっていうのは、剣技が美しいっていうか、強いのが凄いっていうか、だから、その、恋愛的な意味じゃなくて……!」
「うん。それはわかってるんだけど……前戦った先輩が、序列二桁って、あれマジの話なの?」
「あ、そ、そっちでしたか……すいません、早とちりを」
フランさんは恥ずかしそうに目を伏せる。
それから、気を取り直すように大きく深呼吸して言った。
「あのエナ先輩とブロズ先輩は、それぞれ序列56位と38位の上位ランカーです。二人ともSクラスの優秀な生徒ですよ。それを易々と倒してしまうリクスくん、凄すぎです」
「……」
「リクスくん?」
「……え、あーそうなのね。いや、知らなかったなぁ~。たまたまコンディションがよくて、たまたま倒せただけだよ。まぐれだから気にしないように、ね。マジで」
「え? は、はい」
俺はダラダラと脂汗を垂らしながら念を押す。
うっそだろ? マジで序列二桁だったの? あの弱さで?
いや、たまたまあの二人のコンディションが悪かっただけだろ。そう思いたい。
だが、事実がどうであれ俺は学校の上位層に勝ってしまった。
編入生が入れる最上位のCクラスに入ってしまったのも、それが高く評価されてしまったせいだろう。
変な期待とかされてないといいな……
俺は戦々恐々としつつ、サルムくんと別れてCクラスに入った。
△▼△▼△▼
「えーそれでは。本日からこのクラスに編入してくる生徒を紹介します。リクスくんと、サリィさんです。二人とも、挨拶お願いしますね」
朝のホームルームで、目の前に200人近い生徒達がいる中、俺は壇上に立たされていた。
一年Cクラスに編入が決まった生徒は、俺に加えてもう一人だけらしい。
華奢な体つきで、藍色の長い髪に泣きぼくろが特徴的な女性教師の短い紹介の後、自己紹介をする流れになった。
面倒くさいけどやるしかないか。
目立たないよう、当たり障りのないよう、それっぽく将来の抱負と趣味でも述べて――
そんなことを考えながら、一歩前に踏み出した。
「あー、俺――」
「ワタクシの名はサリィ=ルーグレット。誇り高きルーグレット伯爵家の娘ですわ!」
ええー。
俺の方が先に名前紹介されたし、俺からじゃないの? まあ、いいけどさ。
俺はちらりと、となりのサリィさんを流し見る。
縦ロールの美しい金髪に、
薄い胸を威張るように張って、凜とした声色で自己紹介をしている。
一目で垣間見える、自信家で高飛車なお嬢さまって感じだ。
できれば関わり合いたくない。絡まれたら面倒くさそうだ。
「ワタクシの夢は、優れた魔法剣士になること。将来ルーグレット家を継ぐ者として、どんなに辛いことが待ち受けていたとしても、粉骨砕身努めていく所存でありますわ」
自己紹介という名の演説を聴きつつ周りの反応を見ると、小声で「伯爵家のお嬢さまだ」「すげー、噂通り美人だな」「俺、告白しようかな」「バカ、お前なんか足で踏まれて終わりだろうぜ」などと言っている。
そこそこの有名人なんかな。そんな事を考えていると、5分ほど続いたサリィさんの自己紹介が終わり、俺の番が回ってきた。
「あー、リクスです。趣味は昼寝とゲーム。将来はまあ、何人たりとも怪しい人間を入れない自宅……いや、邸宅警備員兼、家族の護衛になろうかと思ってます。よろしくお願いします」
「……以上ですか?」
「はい、以上です」
サリィさんの自己紹介が長かったからか、担任の先生が確認を取ってくる。
無駄を省いた完璧な自己紹介。ネタにする内容がなさすぎて、みんな俺への評価は微々たるもののはず――
「おいアイツ、序列二桁にストレート勝ちしたんだろ?」「あ、それ私試験場で見てたよ。すごかった」「マジかよ、強そうに見えねぇのに……実力隠してんのか?」「ウチ、リクス君の顔好みかも」「わかる~! ちょっと可愛い!」
あ、あれ。
心なしかサリィさんの時より、反応が大きいような……
「っ!」
ゾワッとうぶ毛が逆立つような寒気を感じて、俺は横を見る。
サリィさんが、ハイライトの消えた目で俺を睨んでいた。
ふ、不可抗力です。
「皆さんもお二人と仲良くしてあげてくださいね。サリィさんは、一番前の席。リクス君は……フランシェスカさんの隣があいているので、そこに座ってください」
「……はい」
「わかりましたわ」
俺はフランさんの方へ向かう。
彼女は俺の方を見て照れくさそうに頬を染めると、小さな手で手招きしてきた。
やべ、超可愛い。
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