小話 黒猫と黒龍の初めての店番

 いつものように、ばたばたと品出しから仕入れから店内を駆け回る裕昌。黒音がカウンター上のベッドで丸くなり、裕昌を手伝う黒龍。今朝も平穏極まりない時間が流れていた。

ーーはずだった。まさか黒音と黒龍にとって慌ただしくなる1日になるのだと、この時誰が予想できただろうか。


「ええと、これは裏に置いておく分で、上から2番目の棚…それでこれが……」


 店裏の倉庫で独り言を呟きながら忙しなく動き回るのは、五十鈴裕昌、24歳。独り言でも呟かないと瞬く間に混乱してしまうほどの物量だ。

 過労気味の裕昌は引きこもりが祟ってか、体力的に限界だったのだろう。


「わっ」


 倉庫の床の小さな段差に足を取られた。

 いつもなら耐えるのだが、いかんせん、疲労が溜まっている体が俊敏に動けるはずがない。

 それに加えて、躓いた衝撃とは別の脳内に過ぎった変な浮遊感。


 あ、これまずい。


 そう思った瞬間、裕昌は大きな音を立てて荷物ごと倒れ込んだ。




 店で寝ていた(猫ブームに乗っかって客寄せしていた)黒音と商品棚を掃除していた黒龍の耳に、最近で一番大きい音が入ってきた。


「っ!?!?!?!?」

 

 何かが落ちて床とぶつかった音が響く。

  黒音と黒龍は肩を跳ねて驚き、顔を見合わせる。

 てててと黒音が裏の倉庫へ走ってくる。


「おーい、裕昌ー!大丈夫かー?何があっt……裕昌っ!?」


 黒音の声音が緊迫したものを孕む。黒音は倒れたまま動かない裕昌に駆け寄った。

 慌てて猫耳の少女の姿に戻る。裕昌を揺さぶり、呼吸がやけに速くなっていることに気がついた。

 裕昌の額に手を当てる。いつもの体温より、ほんのり温かかった。


「おい、裕昌!しっかりしろ!」


 黒龍が遅れて駆け付けてくる。倒れた主人を見て最初は慌てたものの、しっかりと裕昌を抱えた。


「主を寝室へ運びます。黒音は桶と手拭いと水を」


「ああ、わかった」


 黒龍は裕昌を抱えて、裕昌の部屋へ。黒音はお風呂場に向かい、水を張った桶とタオルを用意する。

 裕昌をベッドに寝かせ、毛布をかけた黒龍は、心配そうに主人に呼びかける。


「主…」


「……んぁ……」


 すると、裕昌が目を覚ました。裕昌は自分の身に何があったかを思い出そうとする。


「えっと……確か倉庫で色々整理とか数の確認をしてて……それで床に躓いて転けて……あ、確認の途中だったはず…」


 裕昌は上体を起こそうとするが、それを黒龍が制止する。


「主!ダメです。お休みになってください。熱もありますし、過労死してしまいます」


「黒龍……でも」


「でもじゃない。いいから黒龍の言う通り寝てろ」


 裕昌がドアの方を見ると、桶を片手で抱えた黒音が、仁王立ちしていた。

 裕昌の方までやってくると、黒音は裕昌を押し倒した。


「えい」


「ちょっ!?」


 黒音がタオルを水で濡らし、絞ったものを裕昌の額に乗せる。


「今日ぐらいは休め。店番は黒龍に任せろ。そしてお前は私が看病するから大丈夫」


「なんでどこか嬉しそうなんだよ」


 嬉しさを隠しきれていない黒音に、裕昌は苦笑する。2人ともやる気満々、という感じで裕昌に熱い視線を送っている。


「わかったわかった。じゃあ黒龍は店番を頼むよ。黒音は……悪いけど看病頼む」


「はい!この黒龍、主の命に従って店番を始めます!」


「……そこはそばにいて欲しいって言うところなんだぞ」


 主人に信頼されるのがそれほどまでに嬉しいのか、喜んで階段を降りて行く黒龍と、ぶすーっと不満げに頬を膨らませた黒音が、追加の氷を取りに黒龍の後を付いていく。

 裕昌はドアが閉まったのを確認すると、布団を口元まで引き上げた。


「……そんなこと、恥ずかしくて言えるかよ……」


 熱のせいか、それ以外か、はたまた両方か。裕昌の顔は湯気でも立ちそうなほど真っ赤になっていた。





◇ ◇

 さて。時は1週間前ほどまで遡る。

 共に暮らしていた老夫婦の口から信じられないような言葉が飛び出した。


「ねえ、ひろくん。そろそろ家とお店を任せようかと思うのだけれど」


「………………………………はい?」


「うむ。わしらももう歳じゃ。老人ホームにでも入って余生を過ごそうかと前々から計画しておってだな」


 開口一番がその言葉だったため、あまりの急展開に裕昌は聞き返すことしか出来なかった。


「老人ホーム?」


「このままいてもねえ、ひろくんに迷惑がかかるでしょう?」


「だったら、老人ホームに2人で入ろうということになったんだ」


「別に俺は迷惑じゃないけど……」


 確かに、裕昌は最近妖がらみのことに巻き込まれ、泥棒のように夜ひっそりと出入りすることが増えてきた。それも段々、悪いことをしているようで嫌気が差していた。自分1人だけになれば、2人に迷惑がかかることなく、黒音についていくことが出来る。

 しかし、老夫婦には子供がいない。だからこそ、裕昌自身、彼らの実の孫のような存在でありたかった。


「安心してね。もう貯金は溜まっているのよ?」


「わしらが自分達で店をやって貯めたお金だよ」


 わはは、とこれまでになく豪快に笑う老夫は生き生きとしている。確かに、この2人は定年を超えているというのに働きすぎだ。


「うん。わかった。この家と店は任せて。2人は思う存分好きなことして来てよ」


「ありがとうねえ」


「たまにはひろの顔、見せに来てくれよ」


 そう言って、しわくちゃの二つの手は裕昌の頭をくしゃくしゃと掻き回した。


◇ ◇


 と、大口を叩いたのもいいところ。こうして今疲労で倒れてしまっている。

 というのもここ1週間ほど、老夫婦に店を任されてからはじめての1人きりだった。今まではというと、アルバイトというかもはや社員の様な働きぶりの菜海が手伝っていたのだが、彼女はまだ大学生。テスト期間というものが存在するのだ。

 裕昌も学生時代はテストというものを経験したため、その大変さをよく知っている。

 そのため、テスト期間は休み、という方針を立てた。

 今回のことでどれだけ菜海の存在がどれだけ大きかったのかを実感する。彼女には頭が上がらない。


「うーん、熱はあるけど微熱だし、このまま寝たきりっていうのもなー…」


 はっきり言って退屈だ。だが、黒龍と黒音の様子を見に行けば2人から、何をやっているんだ。病人なんだから大人しくしていろ。と寝室へ強制連行されるに違いない。下手をすれば、裕昌を気絶させてでも寝かせそうだ。あの2人ならやりかねない。


「それはやめとこう……」


 背筋に薄寒いものが走る。こういう場合の2人は特におっかないのだ。

 ふと、パソコンが目に止まった。あれは高校時代、自分でバイトをしてようやく手に入れた代物だ。


「ゲームくらい、ちょっとだけならいいかな……」


 本気でやれば体力を消耗するものだが、気晴らしになるような趣味は、あいにくとゲーム以外持っていない。今の状態では銃を撃ち合うFPSゲームは無理だろう。そうだ。材料を集めて生活するだけの作業ゲームをやろう。

 黒音が戻って来るまでの間だけ。

 そう思って、裕昌はパソコンの電源をつけた。



 店番をしに降りて来た黒龍と、看病をする気満々の黒音が一階でそれぞれの仕事をし始めた。


「黒音、店番というのは具体的にどういうことをしたら良いと思いますか?」


「そうだなー、客が来たら対応する、くらいで良いと思うぞ。後で裕昌に詳しく聞いてみるが」


「お願いします」


 黒音は黒龍の質問に答えながら、冷蔵庫を漁っている。

 ふむ。ひとまず果物とスポーツドリンクを持って行ってみよう。その後でたまご粥を作って持っていこう。


「ふふふ……ほむ姉から料理の腕はそこそこに鍛えられているからな。美味いと言わせてやるよ……」

 

 などと大した内容ではない言葉を悪役っぽく言いながら、時々不敵な笑みをこぼす。


「見てください黒音」


 黒音は黒龍の声が聞こえて振り向く。そこには、五十鈴屋の制服のエプロンを身につけた黒龍がいた。まだ試作段階のものだが、裕昌も最近は身につけている。

 じゃじゃーんと、効果音を付けながらくるりと一回転する。


「どうでしょう!主のものをお借りしたのですが」


黒と白の着物をたすき掛けで袖をまくり、エプロン、という姿は何処か家政婦のような、和風喫茶メイドを思わせる。

黒音は悔しいが、可愛いと言わざるを得なかった。


「か、可愛いな、ちくしょう」


「ありがとうございます」


 褒められた黒龍は鼻歌を歌いながら店番の持ち場へ向かっていく。


「人間に見えるようにしとけよー」


 黒龍の場合、放つ妖気を強めることで人間に視認できるようになるらしい。それは不知火も同じで、絶賛妖力不足の黒音にはできない芸当だった。


「くっそお。あたしだって昔なら出来たぞ……」


 パンッ、と果物を包丁で叩き割る。片腕が無くても桃くらいの柔らかさなら、妖怪の黒音にかかれば造作もない。皮むきは時間がかかるため、セルフでやってもらおう。こういう時に義手があれば大分楽なのだが、妖怪用の義手はそれなりの技術者に作ってもらわなければならず、そこに行くまでが面倒臭い。人間の病院に通うのはそもそも論外。

 黒音は適当な大きさに切った桃を皿の上に乗せ、フォークと共に盆の上に乗せる。スポーツドリンクのペットボトルを肘から先がない左腕で挟み、階段を上っていく。


「裕昌―、生きてるかー」


 などと言いながら右腕でドアの取っ手を下げ、何とか開いた。裕昌は何故か椅子に座っていた。その様子を見た黒音の目が徐々に据わっていく。


「こら、病人が何をやっとる」


「病人って言われても、微熱で寝たきりのほうがしんどいんだけど」


「安静が一番だぞ。このゲーマーめ」


 黒音はスポーツドリンクを枕元のミニチェストに置き、桃を裕昌の机に置く。


「皮むきはセルフサービスで」


「はいはい」


 裕昌はゲームを一旦止め、手で皮をむいてフォークで口に放り込む。美味い。


「食欲はあるんだな」


「うん。お腹は空いてる」


 それは良かった、と頷く黒音。これは卵粥を振舞うチャンス。


「なら心配ないな。今日一日はゆっくりしてろ。あたしは黒龍を手伝ってくる。……なんかあいつ心配なんだよな……。なにか店番でやることは?」


「お客さんの対応だけでいいよ。お金もらって、商品袋に入れて終わり」


「了解」


 昼過ぎになったらまた上がってくる、とだけ言葉を残して、黒音は扉の向こうへ消えた。





 黒音が裕昌の元に桃と飲み物を届けに行った頃。黒龍は最初の客と出会っていた。その客はいつも髪飾りと黒猫のグッズを買いに来る常連だ。黒音のファン第一号でもあるマダムだ。


「あら、新人さん?可愛いわねえ。私、いつもこの店でお買い物をするのよ」


 おほほほ、と上品に笑うマダムに、黒龍は笑顔で対応する。


「はい。今日はあるj……じゃなくて、裕昌様のお手伝いを」


「まあ、そうだったの~。それじゃあ、新人さんのおすすめは何かしら?ここからここの黒音ちゃんグッズは持っているのだけれどね」


 そう言ってマダムが差したのは棚一列ぶんの黒猫グッズだった。ほとんどコンプリートしているが、数点未購入のものがちらほら。

 黒龍は菜海の店番の時の姿を思い出す。悩んでいる客にはセールスをたまにしていた。


「そうですね……では、この黒猫スタンド、はどうでしょう?スマホスタンドにも、写真立てにも、付属のカレンダー立てにもなりますよ」


「まあ!これはまだ持っていないわ~!これにするわね」


 どうやらお気に召したようだ。マダムは数種類ある顔を吟味し、そのうちの一つをレジに持ってきた。黒龍はバーコードを読み取り、金額を読み上げる。そこに、黒音がやってきた。


「2000円の預かりか。黒龍、2000、と入力して決定ボタンだ」


 黒龍は黒音の言うとおりに操作し、お釣りを返す。


「今日は黒音ちゃんはいないのね……」


 マダムがしゅん、と肩を落とす。これは看板猫のプライドが許さない、と黒音は猫の姿に戻ってカウンターに飛び乗った。


「まあ!黒音ちゃん会いに来てくれたの~」


 にゃーん、ごろごろ、と甘えた声を出し、すりすりをサービスする黒音。その間に黒龍が商品を梱包する。


「お店番いつも偉いわねえ。今度ちゃーる買ってきてあげるわねえ」


 そうだろう?可愛いだろう?ほらもっと褒めろ。

 という黒音の魂胆が丸見えの黒龍は笑顔を崩さず、うわあ可愛くないですね、この黒猫。とか思うのだった。


「お待たせいたしました。ありがとうございます」


「こちらこそありがとう、新人さん。また会えるといいわねえ」


「はい、縁があれば、またいつか」


 手を振って去っていくマダムを一礼して見送り、黒音と黒龍は一息ついた。


「なんとかうまくやれたな」


「はい。この調子で頑張ります!」


 やる気に満ちた顔をする黒龍。その時、店に学生のグループが入ってきた。どうやら修学旅行の最中らしい。ギャル風の女子高生三人と、不良っぽい男子三人。


「えー!?ちょーかわいいじゃん!この店!」


「みてー!にゃんこいる!」


「SNSで見たけど、黒猫のグッズ可愛い!」


 女子はきらきらと目を輝かせて店内を見て回り、黒音をまじまじと見つめる。


「おねーさん、この子触っても大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫ですよ」


「マジ!?」


 女子三人は見た目は派手だが、素直で優しいらしい。黒音を三人で撫でている。黒音はしめしめと思ったのか、ころん、と仰向けに転がった。


「かーわーいー!」


 女子が完全に黒音にメロメロになっている。一方で男子は興味がないのか、つまらなさそうにしていた。


「ったく、早くしろよ」


「猫なんてどこにでもいるだろうが」


 そんな様子を見ていた黒龍は、少し思案するそぶりを見せると、男子学生三人に近寄っていった。

 

「やっぱり殿方はつまらないですよね……すみません……。よろしければそこに椅子がございますので、お掛けになってお待ちください」


 しゅん、とあざとく落ち込むそぶりを見せる黒龍。突然のことに、男子学生はたじろいだ。どうやらこの男子達は思ったより悪い子たちではなさそうだ。

 あと一押しくらいで良いだろう。


「それとも、もうお帰りになられますか?」


 さりげなく上目遣いでフィニッシュ。初心な男子学生たちには十分効き目があった。


「あ。い、いや」


「も、もう少しここに居ようかなーって」


「なかなかいいお店ですね!」


 黒音と黒龍、女子学生たちは皆「チョロ……」と思うのだった。

 そして黒龍は満面の笑みを浮かべてありがとうございます、と一言置いてレジへ戻った。女子学生が相当黒音を気に入ったのか、黒猫グッズを購入する。

 ありがとうございましたー、と黒龍は一礼し、学生たちは手を振って去っていった。


「ふっ、人間っていうのは可愛いものにはちょろいな」


「そうですね。勉強になりました」


 二人は何処か勝ち誇った顔でいる。ここに裕昌がいたら育て方を間違えたかもしれない、とげんなりしていたことだろう。

 再びちりん、と入り口の鈴が鳴る。昼頃までは修学旅行で訪れていたのか、学生の客で賑わっていた。黒龍と黒音は一瞬裕昌のことも忘れるほど接客業務に追われていたのであった。



 昼。裕昌はうーん、と背伸びをした。結局微熱があるというのにゲームに熱中してしまっていた。作業ゲームをしっかりやりこんで、もうすぐボスが潜む要塞探し、というところまで進んでいる。そろそろ飽きてきて他のゲームをやろうと思い、時計を見ればもう昼過ぎ。そろそろ黒音が上に上がってくることだろう。

 その時、ドアがガチャっと開いた。


「裕昌―。ご飯持ってきたぞー」


 黒音の手には、どこから出してきたのかわからない小さな土鍋と取り皿、れんげをのせた盆が抱えられていた。


「卵粥にした。熱いから気を付けろ」


「ありがとう。いただきます」


 裕昌はある程度取り皿に粥を移すとれんげに乗せ、はふはふと息を使って冷ます。一口で食べると、程よい塩味と優しい卵の味が口に広がる。


「うまっ、黒音料理上手だったんだな」


「そりゃあ、ほむ姉に鍛えられてるからな。腕は減っても味は変わらん」


 黒音は裕昌に褒められてまんざらでもない様子だ。裕昌は苦笑して粥を口に運ぶ。


「そういえば店の様子は?黒龍は大丈夫?」


 問われた黒音は、ふっふっふ、と不敵に笑う。


「心配ないぞ。いつもより客が多いけど、しっかり儲かってる」


「……黒音、何したんだ?」


 裕昌の笑みが若干引きつる。脅したりしていないだろうか。


「朝やってきた学生諸君に媚びまくったら学生仲間が押し寄せてきた。凄いぞ、女子高生の拡散能力」


「へえ……」


 裕昌はありがたいような、しかし後日客が増えるかもしれないという恐怖とが混ざって複雑な気持ちだ。

 すると、黒音は裕昌の目の前に腰を下ろすと、満面の笑みを浮かべた。


「いろんな人に撫でまわされて疲れたから、撫でて褒めて」


 裕昌は目をぱちくりさせる。黒音がこうもわかりやすく甘えてくるのは珍しい。加えて少女の姿で。ということはかなりの人数に愛想を振りまいていたのだろう。

 仕方ない。今日くらいは散々甘やかしてやろう、と心に決める。

 裕昌は黒音の背後にまわって腰を下ろすと、自分の足の間に黒音が挟まるような形で密着する。そして、抱き寄せて頭を撫でる。


「えらいえらい。よくがんばりました」


「……別にここまでしてくれとは言ってないんだけどな……」


 黒音は自分から言い出したはずだが、恥ずかしくなって口をとがらせる。

 裕昌は、このツンデレめ、とぼやくのだった。



 なんだかんだあって閉店後。全ての片づけを終えて黒龍が一番最初に言ったのは。


「主、頑張ったご褒美として褒めてください!」


 なにこのデジャヴ感。

 裕昌は目の前で正座する黒龍の姿に既視感を覚えた。その横で黒音が不機嫌そうに尻尾をぶんぶん振っている。裕昌は少し思案するそぶりを見せる。さて、どう褒めようか。ぽむ、と黒龍の頭に手を置いた。そして撫でる。


「ありがとう、すごく助かった。今度は一緒に接客しよう」


 その言葉に黒龍は、子どものように顔を輝かせた。はい、と元気よく返事をする。



 そのあと、黒音と黒龍による裕昌争奪戦が始まったのは、また別のお話。

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