第65話 相思相愛?
図書館で作業をしていると赤松部長がやってきた。
「ヤホー君、すまないねえ茉白を転勤させちゃって」
「えっ、茉白ちゃんは転勤したんですか?」呆れ顔になってしまった。
「そこでだね、助っ人を用意したんだよ」そう言って廊下をのぞき手招きした。
「紹介するよ、山﨑さんと深田さん、二人は文芸部なんだけど文章を書くより本を読む方が好きらしいんだ。だから図書部員の方がいいと思ってさ。勿論、顧問の先生に話して了解を取ってあるから、二人が出来そうなら図書部員にしてあげて欲しいんだけど」口角を上げた。
「赤松部長!ありがとうございます!」僕は起立して深々と頭を下げた。
二人の図書部員候補はキョトンとして僕らを見ている。佳さんは少し恥ずかしそうに笑って出て行った。
僕は二人に図書部員の仕事を説明する、二人は顔を見合わせて頷いた。
「私たち何とか出来そうです、よろしくお願いします」ペコリと頭を下げる。
「改めて、僕は樹神星七です、よろしくお願いします」握手の手を出した。
「私、
「私は
僕は二人と握手した。そこへ茉白ちゃんが入ってくる。
最近茉白ちゃんはコンタクトでメガネをしていない。髪も前より伸ばしてカールしている。少しお姉さんっぽくなってるのだ。
佳さんから話を聞いていたらしく、直ぐに状況を把握した。
「遊木茉白です、よろしくね」直ぐに二人と仲良くなった。
茉白ちゃんはクッキーを用意していたようだ、僕は4人分のココアを買って来てささやかな歓迎会が模様された。
「分からない事があったら何でも聞いてね」茉白ちゃんはニコニコしている。
「あのう………遊木先輩は樹神先輩とお付き合いしてるんですよね?」奈津美ちゃんがボソッと聞いてくる。
「えっ、そっち?」茉白ちゃんが大きく瞬きする。
「赤松先輩から聞いたんですけど、違ってました?」伊里亜ちゃんが可愛く首を傾げる。
「そうだけど何か問題があるかい?」僕は口角を上げた。
「勿論問題はありません、遊木先輩は綺麗だし樹神先輩はカッコいいし、羨ましいなあって思って……ねえ」二人は顔を見合わせて頷く。
「「え〜!」」僕と茉白ちゃんは顔を見合わせた。
「あっれ〜、先輩お二人は自覚ないんですか?」伊里亜ちゃんが不思議そうに聞いてくる。
「自覚ねえ………」僕は考えた。
「じゃあ、樹神先輩は遊木先輩を綺麗だと思ってないんですか?」奈津美ちゃんが首を傾げる。
「それは綺麗だって思ってるよ」
「じゃあ、遊木先輩は樹神先輩をカッコいいと思ってないんですか?」伊里亜ちゃんまで聞いてくる。
「それはカッコいいと思ってるけど………」
「なんだ、やっぱり相思相愛じゃないですか」二人は頷いている。
「いいなあ………」奈津美ちゃんが呟くと「だよねえ………」伊里亜ちゃんが頷く。
「もしかして、私たちが図書部員になって図書館に来たらお邪魔だったりして」二人でニヤニヤしている。
「こらこら、年上をからかっちゃあダメでしょう」茉白ちゃんが嗜めている。
僕は茉白ちゃんが大人の女性になり始めた気がした。
「よかったら来週からでも作業を手伝ってくれると嬉しいな」僕は二人にお願いした。
「「はい、大丈夫です」」二人頷いている。
「じゃあ、よろしくね」茉白ちゃんもニッコリした。
二人が帰った後、奥のメンテ室へ入る。僕は茉白ちゃんを強く抱きしめた。
「やっと会えた………」
「そうだね………」茉白ちゃんも僕を強く抱きしめた。
二人は何度もキスをした。
しばらくして離れた二人は少し寂しそうな表情となっている。
「これから図書館ではあまりくっつけないね」
「そうだね」
「高校生の彼氏彼女ってこんなものかしら………」
「どうだろう、僕は分からないよ………」
「そうね、私も分からないわ」
「でも僕は、図書館で会えるだけでも嬉しいよ、幸せな気分になるし」
「私もよ」恥ずかしそうに僕を見た。
僕はカバンから写真を取り出した。
「これ、プリントしたんだ、軽井沢の画像」茉白ちゃんに見せた。
「出来たんだ」一枚とってみている。
「とっても幸せそうだよ」
「そうね、これを見たら元気になれそう」嬉しそうに微笑んだ。
「早速写真立てに入れるよ」
「私もそうする」
「茉白ちゃんの両親には見られないの?」
「大丈夫、一番上の鍵付き引き出しに入れていつも見るから」
「そうか、それなら大丈夫だね」
茉白ちゃんは大切そうに写真をカバンに入れた。その後二人で駅カフェへ行き、会えなかった時の状況を話した。
帰り道で心がズキズキした。琴音さんとの状況を思うと、僕は悪い人間になったような気がする。いや本当に悪い人だ。茉白ちゃんと付き合っているのに琴音さんと同棲中だ、これって二股なんだろうか?琴音さんは恋人?いや違う許嫁?それも違う、う〜ん何だろう?………やっぱりイトコなんだと思う、でもイトコって何だろう?。
僕はこれまで琴音さんから奴隷扱いをされていると思っていた、しかしそれは違っていて深い愛情で見守られていたんだ。僕はどうしたらいいんだろう?何が正解で何が間違っているんだろう、世の中に正解なんてあるんだろうか?結局ため息しか出てこなかった。
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