第60話 どっか遠くへ………
図書館で作業していたら茉白ちゃんが入って来た。
「お疲れ様、星七君」
「やあ、茉白ちゃん」
「もう直ぐ佳ちゃんが来るよ」
「そうですか、赤松部長が来るんですね」僕は少し笑った。
「何それ?」茉白ちゃんは不思議そうにしている。
直ぐに赤松部長が入ってきた。僕はすかさず立ち上がる。
「赤松部長!お疲れ様です!」僕は”気をつけ”の姿勢で深々とお辞儀した。
「やあ、ヤホー君、元気でやっとるかね?」髭もないのに顎を触っている。
佳さんは僕と茉白ちゃんの前に来ると封筒を二つ差し出した。
「これは今月の給料だ、よく頑張ってくれたね、うん………」
「えっ、何なのこれ?」茉白ちゃんは封筒を見ている。
「赤松グループ、そいとげ支社の給料だよ」また顎を触っている。
「そいとげのお店は給料が出るんですか?ちなみに僕は働いてませんけど?」
「ヤホー君のはジェラシーセットの企画料だよ、少ないが取っておきたまえ。茉白のはランチタイムのバイト分だ、時給千円も出してるからね」更に偉そうになっている。
「バイト代もらえるの?私お手伝いしただけだけど………」
「茉白、しっかりもらって良いんだぞ、それにゴールデンウィークはヤホー君とどっか行きたいんだろう?だからお小遣いが必要じゃん」
「え………でも………本当にいいの?」
「いいから開けてみなよ」
茉白ちゃんは封筒を開けて中身を引っ張り出した。
「嘘!2万円も入ってる」瞳が大きくなっている。
「良かったね茉白、デート資金が出来たじゃん」佳さんは優しく微笑んでいる。
僕も封筒を開けて中身を出した。
「えっ!1万円も入ってる、これは貰いすぎですよ」
「大丈夫、そいとげのお父さんから預かった物だから、バレンタインからお店を開けたりランチメニューを考えてくれたりいろんな事を考えてもらったので凄く感謝してるってさ、もっと払うべきだって言ってたよ」
「そうですか、じゃあ大切に使わせていただきます」僕は頭を下げた。
「二人でどっか行ってきたら?でも茉白はデート以外の日は店を手伝ってね、忙しいから」
「うん、そうするよ」茉白ちゃんは頷いた。
「じゃあ私は会議があるからこれで失礼するよヤホー君」顎を触っている。
「赤松部長、ありがとうございます、今後ともよろしくお願いいたします」僕は深々と頭を下げた。
赤松部長は偉そうに出て行った。
「何かコントを見てるみたい」茉白ちゃんはクスクス笑っている。
「赤松部長は爛れた関係が好きだからね」僕は笑った。
「何それ?」茉白ちゃんから❓マークがぽわ〜っと出ている。
「茉白ちゃん、ゴールデンウイークは何処か行きたいところがある?」
「私どっか少し遠い所に行ってみたい、でも私の親は保守的だから泊まることは出来ないの………」
僕はしばらく考えた。
「そうだ、軽井沢なんてどう?」
「軽井沢?………日帰りできるの?」
「うん、新幹線だったら一時間半で行けるよ、新幹線に乗ったらどっか遠くに旅してる感じがするんじゃない?」
「そうかも………それいいかも」茉白ちゃんの目がキラキラした。
「これで行けそうだし」僕は封筒から出した1万円札をひらひらさせた。
「そうだね、臨時収入が入ったし」
「僕はゴールデンウィークの前半は空いてるよ」
「じゃあ2日目なんてどう?」
「いいね、その日にしようよ。駅のみどりの窓口でチケットが買えるから帰りに寄ってみようか?」
「いいね、軽井沢ってどんな感じだろう?」視線が未来に向かってるようだ。
僕はパッドを出して茉白ちゃんと軽井沢の観光を検索した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます