第47話 お返しは?
テストもバレンタインも何とか終わった。僕はそれなりの成績で胸を撫で下ろす。上位50位までが貼り出されているが、茉白ちゃんはなんと8位だ、凄い!。僕は37位だった。
2年生の順位を見て驚いた、1位はなんと佳さんだ、あんなに人をイジってくるけど頭いいんだなあ………感心してしまう。
3月になると色々と忙しい。卒業式が待っている。雪村先輩が卒業していなくなるのは少し不安だ。図書館の仕事も忙しい。帰ってこない本を催促しなけれなならない、3年生だと居なくなってしまうので、僕と茉白ちゃんは調べて対応した。
「ふう、何とかなりそうだね」僕はリストを見ながら一言もらした。
「そうね、これで安心して卒業式を迎えられるね」茉白ちゃんが頷く。
「早く図書部員も新入部員が入ってくれると助かるんだけどなあ………」
「いい子が入るといいね」
「そうだね、僕らみたいに本好きがね」そう言って笑った。
「ふふ………」茉白ちゃんも笑った。
「そういえば、茉白ちゃんってどうして本が好きになったの?」
「う〜ん………やっぱり絵本かなあ………それがきっかけで本に興味持ったみたい、その後は佳ちゃんが持ってた本やマンガとかかな」
「ふ〜ん絵本がきっかけか、なんか素敵だね」
「そうかしら、星七君のきっかけは?」
「僕は母さんがいっぱい本を持ってて、小さい頃読み聞かせをしてくれてたような気がする」
「そうなんだ、それも素敵なことね」
「本が好きになったおかげで茉白ちゃんとこうして知り合えたから嬉しいよ」
「私も嬉しい」
図書館は柔らかな雰囲気に満たされた気がした。
自宅へ帰った僕は料理を始めた、今夜は回鍋肉を作る。勿論本格的にはできないので、回鍋肉の素を使い簡単に仕上げる。茉白ちゃんに教えてもらったおかずの一品だ。
出来上がったらタイミング良く琴音さんが帰ってきた。
「ただいま〜、お腹空いたよ〜!」
「今完成しました、今夜は回鍋肉定食です!」
「そうなんだ、美味しそうだねえ。最近星七は料理が上手になったねえ」感心している。
「茉白ちゃんに色々と教えてもらっているので」
「じゃあ、茉白ちゃんに感謝しないといけないね」ニヤリとした。
琴音さんがジャージに着替えると、二人で食べ始めた。琴音さんは何度も頷きながら食べている。
「ねえ星七、茉白ちゃんへのお返しは何か用意した?」
「いえ………何が良いか浮かばなくて………」
「なんか情報はないの?」
「う〜ん………今日話したんだけど、本を好きになったきっかけは絵本だと言ってました、でも今更絵本はねえ………」
「あっ!」琴音さんは急に立ち上がると、部屋へいき1冊の絵本を持ってきた。
「星七、開けてごらんよ」微笑んでいる。
僕はページを開いてみる。開いた本の上にお城が出来上がった。「お………」またページをめくると今度は森が広がった。
「凄い、絵が飛び出してくる」僕は眼を見開く。
「こんな絵本もあるよ、茉白ちゃんにホワイトデーのプレゼントでどうかしら?」
「これ、何処に売ってあるんだろう?」
「玲司さんに相談したら、きっと良いのを選んで手配してくれるわよ」
「それは良いかも」茉白ちゃんの喜ぶ顔が浮かんできた。
「たのんであげようか?」
「はい、是非お願いします」僕は何度も頷いた。
琴音さんはすぐに電話してくれた、そして僕はほんのりうれしくなった。
「ちなみに、玲司さんからはホワイトデーには何か来ないんですか?」
「来ないよ、何もいらないって伝えてあるから」
「何で?本命じゃないんですか?」
「だって、可愛い奥さんがいるのよ」
「え〜………」
「高校から付き合って結婚したんだって、とっても仲がいいみたいよ」
そう言った琴音さんは着ていたジャージを寂しそうに見ている。僕は『海斗』と呼んで涙を流していた琴音さんを思い出した。
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