第46話 世界一のチョコ

「お帰りなさい星七、どうだった?」


「はい、たくさんの人が来て忙しかったです」


「あら、よかったじゃない」


「これ、そいとげからです」和菓子の箱を差し出す。


「ん、男の子からもらうのは逆じゃない?」


「色々とアドバイスしていただいたお礼だそうです」


「私何も言ってないけどいね?」


「いえ、琴音さんのアドバイスがあったからですよ」


「そうなの………」琴音さんは箱を開けた。


中にチョコ風味の和菓子と、美しく四季を表現した和菓子が入っている。白いしおりに『感謝致します』と一筆添えられている。


「ふ〜ん、そいとげ君のパパは達筆だねえ、それに気遣いの人なんだ」


「そうかもしれません」


「そいとげ君のママが出て行ったのは、それなりの理由があるかも知れないね」


「そうでしょうか?」


「だって、愛想をつかされるような人じゃ無いもの」


「ですよね、とても優しい人です」


「美味しいお茶をいれて早速いただこう」琴音さんはお茶の準備をした。


 チョコ風味の和菓子は美味しかったが、四季を表現した和菓子はさらに美味しい、何処か職人のプライドを感じさせる気がした。


 僕はどうせバレてしまうと思い、二つのチョコをテーブルに出す。


「おっ、星七は2つ貰ったの?」


「はい」


「こっちが茉白ちゃんの本命チョコだね」


「はい、何でわかるんですか?」


「だって、愛が滲み出ているもの」ニンマリしている。


「はい、私からの本命チョコよ」琴音さんからも渡された。


「今年は3個か、きっと来年は10個くらいはもらえるかもね」琴音さんはニヤニヤしている。


「え〜、そんなに増える事はないと思いますよ」


「そんな事はあるよ、星七はもっと自分に自信を持ってね」


「僕のどこに自信を持てばいいんですか?何も持ってませんよ」僕は唇に力が入る。


「だって私が本命チョコを渡した人がモテない訳ないでしょう!」


「えっ、基準がよくわかりませんけど?」


「いいの分かんなくっても、これから星七はモテモテになってく気がするの!」


「慰めてくれなくても大丈夫です!」首を横に振った。


 茉白ちゃんからのチョコは優しくてほんのり甘い初恋の味がした。琴音さんからの高級チョコは世界を感じて新たな価値観を持たせてくれる気がした。


「これ、いただき!」琴音さんが茉白ちゃんからのチョコをさっと一つ取ってパクリと食べた。


「えっ、それは本命チョコなのに………」僕は固まる。


「う〜ん、優しい甘さだねえ、茉白ちゃんの愛を感じるなあ」


「何するんですか?」僕は睨んだ。


「私の本命チョコも、茉白ちゃんに一個食べさせてあげたら?日本のお店には売ってない珍しいチョコだから」ニヤリとしている。


「そうか………そうですね………確かに食べさせてあげたいかも………」ゆっくり頷く。


「私も茉白ちゃんのを1個食べたから、おあいこでしょう?」笑っている。


「じゃあ明日茉白ちゃんに1個あげます」6個入りだったチョコの4個を箱に入れカバンに入れた。



 翌日になり僕は牛乳を2個買って図書館のメンテ室に来ている。やがて茉白ちゃんが入ってきた。


「こんにちは星七君」優しい微笑みをくれた。


「こんにちは、あのう………これ、一緒に食べようよ」そう言って宝石箱のような箱を出して、横に牛乳を置いた。


「えっ、何これ?」


「琴音さんのママがベルギーから取り寄せたチョコなんだって、珍しいから茉白ちゃんにも食べさせたいと思ったんだ」


「あ、ありがとう」茉白ちゃんは不思議そうに中身を見ている。


「よかったら食べてみて?」


「うん………」一つ取ってパッケージを開け食べる。


「凄い!とっても高級な味がする、チョコを超えてるね」茉白ちゃんの瞳が大きくなった。


 僕も一つ食べる。二人で顔を合わせてニッコリした。


「私のチョコと一緒に食べられたら、私恥ずかしいなあ………」少し寂しそうな表情になっている。


「茉白ちゃん、そんな事ないよ、どんな高級チョコでも茉白ちゃんのチョコには勝てないよ、だって茉白ちゃんのチョコは僕のことを思って作ってくれたチョコだろう?世界に一つしか無い愛情のこもったチョコだよ、だから僕に取っては最高のチョコさ」


「星七君はやっぱり優しいね、ありがとう」


茉白ちゃんは超可愛い笑顔を僕にくれた。

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